源氏物語夕顔宵過ぐるほど夕顔の死なにがしの院品詞分解現代語訳3はこちら

「物怖ぢをなむわりなくせさせたまふ本性にて、

いかに思さるるにか」 と、 右近も聞こゆ。 「いとか弱くて、昼も空をのみ見つるものを、いとほし」と思して、 「我、人を起こさむ。手たたけば、山彦の答ふる、いとうるさし。ここに、しばし、近く」 とて、右近を引き寄せたまひて、西の妻戸に出でて、戸を押し開けたまへれば、渡殿の火も消えにけり。

現代語訳

(右近)「むやみに物を怖がりなさるご性分ですので、

どれほど(怖いと)お思いになっているでしょうか」

と右近も(源氏に)申し上げる。

(源氏は)「夕顔はたいそうか弱くて、(太陽の出ている)昼も空ばかりを見ていたな、

(夜にこんな怖い目に逢うなんて)可哀想だ」とお思いになって、

(源氏)「私が、(宿直の)人を起こそう。手をたたくと、

やまびこのような反響音がたいそううるさい。

ここに、しばらく近よっていなさい。」

といって、源氏は右近を引き寄せなさって、

西の妻戸にお出になって、戸を押し開けなさると、

渡殿の火も、消えてしまっていた。

 

「物怖ぢ 名詞
格助詞
なむ 係助詞(係り結び)
わりなく ク活用形容詞「わりなし」連用形
サ行変格活用動詞「す」未然形
させ 尊敬の助動詞「さす」未然形
たまふ ハ行四段活用動詞「たまふ」連体形(係り結びは流れている) 尊敬語 補助動詞 右近→夕顔 ~なさる
本性 名詞
断定の助動詞「なり」連用形
接続助詞
いかに 副詞
思さ サ行四段活用動詞「思す」未然形
るる 自発の助動詞「る」連体形
断定の助動詞「なり」連用形
か」 係助詞(係り結びは省略されている)
格助詞
右近 名詞
係助詞
聞こゆ。 ヤ行下二段活用動詞「聞こゆ」終止形 謙譲語 本動詞 作者→源氏 申し上げる
「いと 「副詞
か弱く ク活用形容詞「か弱し」連用形
接続助詞
名詞
係助詞
名詞
格助詞
のみ 副助詞
マ行上一段活用動詞「見る」連用形
つる 完了の助動詞「つ」連体形
ものを 接続助詞
いとほし」 シク活用形容詞「いとほし」終止形
格助詞
思し サ行四段活用動詞「思す」連用形 尊敬語 本動詞 作者→源氏 お思いになる
接続助詞
「我 代名詞
名詞
格助詞
起こさ サ行四段活用動詞「起こす」未然形
む。 意志の助動詞「む」終止形
名詞
たたけ カ行四段活用動詞「たたく」已然形
接続助詞
山彦 名詞
格助詞
答ふる ハ行下二段活用動詞「答ふ」連体形
いと 副詞
うるさし。 シク活用形容詞「うるさし」終止形
ここ 代名詞
格助詞
しばし 副詞
近く」 ク活用形容詞「近し」連用形
格助詞
接続助詞
右近 名詞
格助詞
引き寄せ サ行下二段活用動詞「引き寄す」連用形
たまひ ハ行四段活用動詞「たまふ」連用形 尊敬語 補助動詞 作者→源氏 ~なさる
接続助詞
西 名詞
格助詞
妻戸 名詞
格助詞
出で ダ行下二段活用動詞「出づ」連用形
接続助詞
名詞
格助詞
押し開け カ行下二段活用動詞「押し開く」連用形
たまへ ハ行四段活用動詞「たまふ」已然形 尊敬語 補助動詞 作者→源氏 ~なさる
完了の助動詞「り」已然形
接続助詞
渡殿 名詞
格助詞
名詞
係助詞
消え ヤ行下二段活用動詞「消ゆ」連用形
完了の助動詞「ぬ」連用形
けり。 過去の助動詞「けり」終止形

源氏物語夕顔宵過ぐるほど夕顔の死なにがしの院品詞分解現代語訳5はこちら