源氏物語夕顔夕顔の死宵過ぐるほど品詞分解現代語訳8はこちら

紙燭持て参れり。右近も動くべきさまにもあらねば、

近き御几帳を引き寄せて、 「なほ持て参れ」 とのたまふ。例ならぬことにて、御前近くもえ参らぬ、つつましさに、長 押にもえ上らず。

「なほ持て来や、所に従ひてこそ」 とて、召し寄せて見たまへば、ただこの枕上に、夢に見えつる容貌した る女、面影に見えて、ふと消え失せぬ。

現代語訳

(留守番の子=滝口の武士が)紙燭を持って参上した。

(留守番の子と源氏の取次をする)

右近も動くことができる様子でもないので、源氏は近くにある御几帳を引き寄せて「もっと(近くに)持って参れ」とおっしゃる。

(滝口の武士である留守番の子にとっては、源氏のような高貴な人物に直接手渡すようなことは恐れ多く)前例のないことなので、源氏の近くにも参れない、それほどの遠慮深さで、長押にも上ることができない。

「もっと近くに持って来るのだ。遠慮も時と場合によるものだ。」と言って、

紙燭を留守番の子から取り寄せて、

(紙燭の光で)夕顔をご覧になると、ちょうどこの枕元に、

夢で見た顔をした女が、幻のように浮かび、ふっと消えた。

紙燭 名詞
持て参れ ラ行四段活用動詞「持て参る」連用形 謙譲語 本動詞 作者→源氏 ~持って参上する
り。 完了の助動詞「り」終止形
右近 名詞
係助詞
動く カ行四段活用動詞「動く」終止形
べき 可能の助動詞「べし」連体形
さま 名詞
断定の助動詞「なり」連用形
係助詞
あら ラ行変格活用補助動詞「あり」未然形
打消の助動詞「ず」已然形
接続助詞
近き ク活用形容詞「近し」連体形
御几帳 接頭語+名詞
格助詞
引き寄せ サ行下二段活用動詞「引き寄す」連用形
接続助詞
「なほ 副詞
持て参れ」 ラ行四段活用動詞「持て参る」命令形 謙譲語 本動詞 源氏→源氏 持って参上する
格助詞
のたまふ。 ハ行四段活用動詞「のたまふ」終止形。 尊敬語 本動詞 作者→源氏 おっしゃる
名詞
なら 断定の助動詞「なり」未然形
打消の助動詞「ず」連体形
こと 名詞
断定の助動詞「なり」連用形
接続助詞
御前 接頭語+名詞
近く ク活用形容詞「近し」連用形
係助詞
副詞
参ら ラ行四段活用動詞「参る」未然形 謙譲語 補助動詞 作者→源氏 参上する
打消の助動詞「ず」連体形
つつましさ 名詞
格助詞
長押 名詞
格助詞
係助詞
副詞
上ら ラ行四段活用動詞「上る」未然形
ず。 打消の助動詞「ず」終止形
「なほ 副詞
持て来(こ) カ行変格活用動詞「持て来(く)」命令形
間投助詞
名詞
格助詞
従ひ ハ行四段活用動詞「従ふ」連用形
接続助詞
こそ」 係助詞(係り結びは省略されている)
格助詞
接続助詞
召し寄せ サ行下二段活用動詞「召し寄す」連用形
接続助詞
マ行上一段活用動詞「見る」連用形
たまへ ハ行四段活用動詞「たまふ」已然形 尊敬語 補助動詞 作者→源氏 ~なさる
接続助詞
ただ 副詞
代名詞
格助詞
枕上 名詞
格助詞
名詞
格助詞
見え ヤ行下二段活用動詞「見ゆ」連用形
つる 完了の助動詞「つ」連体形
容貌 名詞
サ行変格活用動詞「す」連用形
たる 完了の助動詞「たり」連体形
名詞
面影 名詞
格助詞
見え ヤ行下二段活用動詞「見ゆ」連用形
接続助詞
ふと 副詞
消え失せ サ行下二段活用動詞「消え失す」連用形
ぬ。 完了の助動詞「ぬ」終止形

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