右近もいと心あわたたしければ、寝おびれて起きたる心地も、
わななかれて、あやし。童べの雪遊びしたるけはひのやうにぞ、震ひ上がりにける。
「いかでか」 なども言ひあへさせ給はず、かき抱きて出で給ひぬ。
「これは、どうなさることだろうか」と
(浮舟はもちろん)右近も、たいそう心がそわそわとして、
寝ぼけて起きた心地も動揺して、わけがわからない。
右近は、子供が、雪遊びをした様子のように、
全身がわなわなと震え上がった。
右近に「どうして浮舟さまがそんな川の向こうのそんな場所にいけましょうか」
などと言うひまも(匂宮は)お与えにならず、
匂宮は浮舟を抱き上げて、外へお出になった。
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