年ごろさもならひたまはぬ心地に、忍ぶれど、なほものあはれなり。
御衣どもなど、いよいよ薫きしめさせたまふものから、
うち眺めてものしたまふけしき、いみじくらうたげにをかし。
(女三の宮と結婚した源氏は、)三日間は、
毎晩欠かさず(東の対の紫の上のもとから寝殿の女三の宮のもとへ)お通いになるので、
これまで長年の間そのようなこと(=三夜連続で源氏が隣にいないこと)にはお慣れになっていらっしゃらない紫の上のお気持ちでは、我慢しようとするものの、やはりわけもなく悲しく感じられる。
(源氏の)数々のお召し物などに、いっそう念入りに香を(女房たちに)
焚きしめさせなさりながらも、自身は物思いにとらわれている(紫の上の)ご様子は、たいそういじらしげで美しい。
三日 | 名詞 | ||||||||
が | 格助詞 | ||||||||
ほど | 名詞 | ||||||||
は | 係助詞 | ||||||||
夜離れ | 名詞 | ||||||||
なく | ク活用形容詞「なし」連用形 | ||||||||
渡り | ラ行四段活用動詞「渡る」連用形 | ||||||||
たまふ | ハ行四段活用動詞「給ふ」連体形 | 尊敬語 | 補助動詞 | 作者→源氏 | ~なさる | ||||
を | 接続助詞 | ||||||||
年ごろ | 名詞 | ||||||||
さ | 副詞 | ||||||||
も | 係助詞 | ||||||||
ならひ | ハ行四段活用動詞「ならふ」連用形 | ||||||||
たまは | 尊敬語補助動詞ハ行四段活用動詞「給ふ」未然形 | ||||||||
ぬ | 打消の助動詞「ず」連体形 | ||||||||
心地 | 名詞 | ||||||||
に | 格助詞 | ||||||||
忍ぶれ | バ行上二段活用「忍ぶ」已然形 | ||||||||
ど | 接続助詞 | ||||||||
なほ | 副詞 | ||||||||
ものあはれなり。 | ナリ活用形容動詞「ものあはれなり」終止形 | ||||||||
御衣ども | 名詞+接尾語 | ||||||||
など | 副助詞 | ||||||||
いよいよ | 副詞 | ||||||||
薫きしめ | マ行下二段活用動詞「たきしむ」未然形 | ||||||||
させ | 使役の助動詞「さす」連用形 | ||||||||
たまふ | ハ行四段活用動詞「給ふ」連体形 | 尊敬語 | 補助動詞 | 作者→紫の上 | ~なさる | ||||
ものから | 接続助詞 | ||||||||
うち眺め | マ行下二段活用動詞「うちながむ」連用形 | ||||||||
て | 接続助詞 | ||||||||
ものし | サ行変格活用動詞「ものす」連用形 | ||||||||
たまふ | ハ行四段活用動詞「給ふ」連体形 | 尊敬語 | 補助動詞 | 作者→紫の上 | ~なさる | ||||
けしき | 名詞 | ||||||||
いみじく | シク活用形容詞「いみじ」連用形 | ||||||||
らうたげに | ナリ活用形容動詞「らうたげなり」連用形 | ||||||||
をかし。 | シク活用形容詞「をかし」終止形 |
あだあだしく、心弱くなりおきにけるわがおこたりに、
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