とて、出だしたてまつる。ことさらに徒歩よりと定めたり。ならはぬ心地に、いとわびしく苦しけれど、人の言ふままに、ものもおぼえで歩みたまふ。
「いかなる罪深き身にて、かかる世にさすらふらむ。わが親、世に亡くなりたまへりとも、われをあはれと思さば、おはすらむ所に誘ひたまへ。もし、世におはせば、御顔見せたまへ」
と、仏を念じつつ、ありけむさまをだにおぼえねば、ただ、 「親おはせましかば」と、ばかりの悲しさを、嘆きわたりたまへるに、かくさしあたりて、身のわりなきままに、取り返しいみじくおぼえつつ、からうして、椿市といふ所に、四日といふ巳の時ばかりに、生ける心地もせで、行き着きたまへり。
(豊後)「(岩清水八幡宮に)うち次ぎては、仏の御なかには、初瀬(が)なむ、日の本のうちには、あらたなる験現したまふと、唐土にだに聞こえあんなり。まして、わが国のうちにこそ、遠き国の境とても、年経たまへれば、若君をばまして恵みたまひてむ」
とて、(姫君を初瀬参詣に)出だしたてまつる。ことさらに徒歩よりと定めたり。(姫君は徒歩に)ならはぬ心地に、いとわびしく苦しけれ/ど、人の言ふままに、ものもおぼえで歩みたまふ。
(姫君)「いかなる罪深き身にて、かかる世にさすらふらむ。わが親(は)、世に亡くなりたまへりとも、(仏様が)われをあはれと思さば、(お母様の)おはすらむ所に誘ひたまへ。もし、世におはせば、御顔見せたまへ」
と、(姫君は)仏を念じつつ、(母夕顔の)ありけむさまをだにおぼえねば、ただ、 「親おはせましかば」と、ばかりの悲しさを、嘆きわたりたまへるに、かくさしあたりて、身のわりなきままに、取り返しいみじくおぼえつつ、からうして、椿市といふ所に、四日といふ巳の時ばかりに、生ける心地もせで、行き着きたまへり。
「遠き国の境」 ってどこ?
「経」の動詞の活用の種類は?
「若君をばまして恵みたまひてむ」の解釈は?
「おぼえ」の動詞の活用の種類は?
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