いとめづらかにむくつけけ れど、まづ、 「この人いかになりぬるぞ」と思ほす心騒ぎに、身の上も知ら れたまはず、添ひ臥して、 「やや」と、おどろかしたまへど、ただ冷えに冷え入りて、息は疾く絶え果てにけり。
昔物語などでは、このようなこと(夢で恨み言を言ってきた女が実際にでてくること)は聞くが、(自分の身に起こるとは思いも寄らなかった)
たいそう珍しく、不気味だが、まず、「この人=夕顔はどうなったのだろうか」とお思いになる胸騒ぎのせいで、
自分の身の危険もよくかえりみることがおできにならず、夕顔に寄り添って、横になって、「どうした」とお起こしなさるけれど、夕顔はただただすっかり冷えきって、息はとうに絶え果ててしまっていた。
「昔物語 | 名詞 | ||||
など | 副助詞 | ||||
に | 格助詞 | ||||
こそ | 係助詞(係り結び) | ||||
かかる | ラ行変格活用動詞「かかり」連体形
もともと副詞「かく」+ラ行変格活用動詞「あり」 |
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こと | 名詞 | ||||
は | 係助詞 | ||||
聞け」 | カ行四段活用動詞「聞く」已然形(「こそ」結び) | ||||
と | 格助詞 | ||||
いと | 副詞 | ||||
めづらかに | ナリ活用形容動詞「めづらかなり」連用形 | ||||
むくつけけれ | ク活用形容詞「むくつけし」已然形 | ||||
ど | 接続助詞 | ||||
まづ | 副詞 | ||||
「こ | 代名詞 | ||||
の | 格助詞 | ||||
人 | 名詞 | ||||
いかに | 副詞 | ||||
なり | ラ行四段活用動詞「なる」連用形 | ||||
ぬる | 完了の助動詞「ぬ」連体形 | ||||
ぞ」 | 係助詞 | ||||
と | 格助詞 | ||||
思ほす | サ行変格活用動詞「思ほす」 | 尊敬語 | 本動詞 | 作者→源氏 | お思いになる |
心騒ぎ | 名詞 | ||||
に | 格助詞 | ||||
身 | 名詞 | ||||
の | 格助詞 | ||||
上 | 名詞 | ||||
も | 係助詞 | ||||
知ら | ラ行四段活用動詞「知る」未然形 | ||||
れ | 可能の助動詞「る」連用形 | ||||
たまは | ハ行四段活用動詞「たまふ」未然形 | 尊敬語 | 補助動詞 | 作者→源氏 | ~なさる |
ず | 打消の助動詞「ず」連用形 | ||||
添ひ臥し | サ行四段活用動詞「添ひ臥す」連用形 | ||||
て | 接続助詞 | ||||
「やや」 | 感動詞 | ||||
と | 格助詞 | ||||
おどろかし | サ行四段活用動詞「おどろかす」連用形 | ||||
たまへ | ハ行四段活用動詞「たまふ」已然形 | 尊敬語 | 補助動詞 | 作者→源氏 | ~なさる |
ど | 接続助詞 | ||||
ただ | 副詞 | ||||
冷え | ヤ行下二段活用動詞「冷ゆ」連用形 | ||||
に | 格助詞 | ||||
冷え入り | ラ行四段活用動詞「冷え入る」連用形 | ||||
て | 接続助詞 | ||||
息 | 名詞 | ||||
は | 係助詞 | ||||
疾く | ク活用形容詞「疾し」連用形(副詞法) | ||||
絶え果て | タ行下二段活用動詞「絶え果つ」連用形 | ||||
に | 完了の助動詞「ぬ」連用形 | ||||
けり。 | 過去の助動詞「けり」終止形 |
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