源氏物語夕顔夕顔の死宵過ぐるほど品詞分解現代語訳10はこちら
言はむかたなし。頼もしく、いかにと言ひ触れたまふべき人もなし。
法師などをこそは、かかる方の頼もしきものには思すべけれど。さこそ強がりたまへど、若き御心にて、いふかひなくなりぬるを見たまふに、やるかたなくて、つと抱きて、 「あが君、生き出でたまへ。いといみじき目な見せたまひそ」 とのたまへど、冷え入りにたれば、けはひものうとくなりゆく。右近は、「ただ あな、むつかし」と思ひける心地みな冷めて、泣き惑ふさまいといみじ。
現代語訳
どうしようもない。頼りになって、どのようにすればよいかと相談おできになれる人もない。法師などは、このような(魔性のものに取り憑かれて急死した)場合に頼りになるものにはお思いになるけれど。
(でもここにはいない)(オレがいるからビビることなんてないぜ!と)
あれほど(右近に)強がっていらっしゃったが、まだお若いお心で、
(夕顔が目の前で)お亡くなりになったのをご覧になると、
やりきれなくなって、源氏は夕顔をしっかりと抱きしめて、
「あなた、生き返っておくれ。こんなに悲しい目にあわせないでおくれ。」と源氏はおっしゃるが、
夕顔はすっかり冷えきってしまったので、(次第に死相までがでてきて)親しみにくい雰囲気になってゆく。
右近は、「ただ、ああ恐ろしい」と思っていた気持ちがすっかり冷めて、
(主人の夕顔が死んでしまったことを悲しんで)泣き惑う様子はたいそうはなはだしい。