見給びけるに、つゆたがはざりけり。
それ(=実際に道長公が大極殿の高御座の南側の柱の根本を削ったあとを献上されたこと)でもやはり、花山帝は(実際に道長公が大極殿に行ったのかを)疑わしくお思いになったので、翌朝、「蔵人に命じて、削り屑を削ったあとにあてがってみなさい。」とご命令がありましたので、(蔵人が削り屑を大極殿の高御座に)持って行って(削り屑を)柱に押し当ててご覧になると、少しの違いもありませんでした(ぴったり一致した)。
なほ | 副詞 |
疑はしく | シク活用形容詞「疑はし」連用形 |
おぼしめさ | 尊敬語本動詞サ行四段活用動詞「おぼしめす」未然形 |
れ | 尊敬の助動詞「る」連用形 |
けれ | 過去の助動詞「けり」已然形 |
ば | 接続助詞 |
つとめて | 名詞 |
「蔵人 | 名詞 |
して | 格助詞 |
削りくづ | 名詞 |
を | 格助詞 |
つがはし | サ行四段活用動詞「つがはす」連用形 |
て | 接続助詞 |
みよ。」 | マ行上一段活用「見る」命令形 |
と | 格助詞 |
仰せ言 | 名詞 |
あり | ラ行変格活用動詞「あり」連用形 |
けれ | 過去の助動詞「けり」已然形 |
ば | 接続助詞 |
持て行き | カ行四段活用動詞「持て行く」連用形 |
て | 接続助詞 |
押しつけ | カ行下二段活用動詞「押しつく」連用形 |
て | 接続助詞 |
見 | マ行上一段活用「見る」連用形 |
給び | 尊敬語補助動詞バ行四段活用動詞「給ぶ」連用形 |
ける | 過去の助動詞「けり」連体形 |
に | 接続助詞 |
つゆ | 副詞 |
たがは | ハ行四段活用動詞「たがふ」未然形 |
ざり | 打消の助動詞「ず」連用形 |
けり。 | 過去の助動詞「けり」終止形。 |
末の世にも、見る人は、なほあさましきことにぞ申しかし。
その削りあとは、(今でも)たいそうはっきりと残っているようです。
後の世にも、それ(削り跡)を見る人は、やはり(道長公の肝の太さに)驚きあきれることだと申したことですよ。
そ | 代名詞 |
の | 格助詞 |
削り跡 | 名詞 |
は | 係助詞 |
いと | 副詞 |
けざやかに | ナリ活用形容動詞「けざやかなり」連用形 |
て | 接続助詞 |
侍 | 丁寧語補助動詞ラ行変格活用動詞「侍り」連体形「侍る」撥音便「はべん」の「ん」無表記形 |
めり。 | 推定の助動詞「めり」終止形 |
末の世 | 名詞 |
に | 格助詞 |
も | 係助詞 |
見る | マ行上一段活用「見る」連体形 |
人 | 名詞 |
は | 係助詞 |
なほ | 副詞 |
あさましき | シク活用形容詞「あさまし」連体形 |
こと | 名詞 |
に | 格助詞 |
ぞ | ぞ |
申し | 謙譲語本動詞サ行四段活用動詞「申す」連用形 |
し | 過去の助動詞「き」連体形 |
かし。 | 終助詞 |
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