参らせ給へる。
(花山帝は)御扇を叩いてお笑いになられたが、入道殿(道長公)はたいそう長い間、お見えにならないので、「(道長は)どうしたのか」と(心配に)お思いになっていらっしゃるうちに、(道長公は)全く平然と、なんでもない様子で清涼殿の殿上の間に帰っておいでになった。
御扇 | 接頭語+名詞 |
を | 格助詞 |
たたき | カ行四段活用動詞「たたく」連用形 |
て | 接続助詞 |
笑は | ハ行四段活用動詞「笑ふ」未然形 |
せ | 尊敬の助動詞「す」連用形 |
給ふ | 尊敬語補助動詞ハ行四段活用動詞「給ふ」連体形 |
に | 接続助詞 |
入道殿 | 名詞 |
は | 係助詞 |
いと | 副詞 |
久しく | シク活用形容詞「久し」連用形 |
見え | ヤ行下二段活用動詞「見ゆ」未然形 |
させ | 尊敬の助動詞「さす」連用形 |
給は | 尊敬語補助動詞ハ行四段活用動詞「給ふ」未然形 |
ぬ | 完了の助動詞「ぬ」連体形 |
を | 格助詞 |
いかが | 副詞 |
と | 格助詞 |
おぼしめす | 尊敬語本動詞サ行四段活用動詞「おぼしめす」連体形 |
ほど | 名詞 |
に | 格助詞 |
ぞ | 係助詞(係り結び) |
いと | 副詞 |
さりげなく | ク活用形容詞「さりげなし」連用形 |
ことにもあらずげに | ナリ活用形容動詞「ことにもあらずげなり」連用形 |
て | 接続助詞 |
参ら | 謙譲語本動詞ラ行四段活用動詞「参る」未然形 |
せ | 尊敬の助動詞「す」連用形 |
給へ | 尊敬語補助動詞ハ行四段活用動詞「給ふ」已然形 |
る。 | 完了の助動詞「り」連体形(「ぞ」結び) |
御刀に削られたる物を取り具して奉らせ給ふに、
「こは何ぞ。」と仰せらるれば、「ただにて帰り参りて侍らむは、
証候ふまじきにより、高御座の南面の柱にもとをけずりて候ふなり。」
とつれなく申し給ふに、いとあさましくおぼしめさる。
(花山帝が)「どうだったのか、どうだったのか。」と(道長公に)お尋ねになると、(道長公は)たいそう落ち着き払って、(花山帝にお借り申し上げた)御刀と(御刀で)削られたものをいっしょに取り揃えて(花山帝に)謙譲になさるので「これはなにか」と花山帝がおっしゃられると、
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