昔、をとこありけり。人の娘をぬすみて、武蔵野へ率て行くほどに、
盗人なりければ、国の守にからめられにけり。
昔 | 名詞 |
をとこ | 名詞 |
あり | ラ行変格活用動詞「あり」連用形 |
けり。 | 過去の助動詞「けり」の終止形 |
人 | 名詞 |
の | 格助詞 |
娘 | 名詞 |
を | 格助詞 |
ぬすみ | マ行四段活用動詞「盗む」連用形 |
て | 接続助詞 |
武蔵野 | 名詞 |
へ | 角宿 |
率 | ワ行上一段活用「率る」連用形 |
て | 接続助詞 |
行く | カ行四段活用動詞「行く」連体形 |
ほど | 名詞 |
に | 格助詞 |
盗人 | 名詞 |
なり | 断定の助動詞「なり」連用形 |
けれ | 過去の助動詞「けり」已然形 |
ば | 接続助詞 |
国の守 | 名詞 |
に | 格助詞 |
からめ | マ行下二段活用動詞「からむ」未然形 |
られ | 受け身の助動詞「らる」連用形 |
に | 完了の助動詞「ぬ」連用形 |
けり。 | 過去の助動詞「けり」の終止形 |
女をば草むらの中におきて、逃げにけり。
道来る人、「この野は盗人あなり」とて、
火付けむとす。
女 | 名詞 |
を | 格助詞 |
ば | 係助詞 |
草むら | 名詞 |
の | 格助詞 |
中 | 名詞 |
に | 格助詞 |
おき | カ行四段活用動詞「おく」連用形 |
て | 接続助詞 |
逃げ | ガ行下二段活用動詞「逃ぐ」連用形 |
に | 完了の助動詞「ぬ」連用形 |
けり。 | 過去の助動詞「けり」の終止形 |
道 | 名詞 |
来る | カ行変格活用動詞「来」連体形 |
人 | 名詞 |
「こ | 代名詞 |
の | 格助詞 |
野 | 名詞 |
は | 係助詞 |
盗人 | 名詞 |
あ | ラ行変格活用動詞「あり」連体形「ある」撥音便「あん」の「ん」無表記形 |
なり」 | 推定の助動詞「なり」終止形 |
とて | 格助詞 |
火 | 名詞 |
付け | カ行下二段活用動詞「つく」未然形 |
む | 意志の助動詞「む」終止形 |
と | 格助詞 |
す。 | サ行変格活用動詞「す」終止形 |
女わびて、
武蔵野はけふはな焼きそ若草のつまもこもれり我もこもれり。