いみじく/心もとなきままに、等身に薬師仏を造りて、
手洗ひなどして、人まにみそかに入りつつ、
「京にとく上げ給ひて、物語の多く候ふなる、
ある限り見せ給へ。」
と、
身を捨てて額をつき、祈り申すほどに、
十三になる年、上らむとて、九月三日、
門出して、いまたちといふ所に移る。
テストにでそうなところ
敬語の部分は文法的に説明できるようになっておこう
- 給ひ
ハ行四段活用動詞「給ふ」連用形
尊敬語
補助動詞
敬意の方向:作者⇒薬師仏
ーなさる
- 候ふ
ハ行四段活用動詞「候ふ」終止形
丁寧語
本動詞
敬意の方向:作者⇒薬師仏
ーございます
- 給へ
ハ行四段活用動詞「給ふ」命令形
尊敬語
補助動詞
敬意の方向:作者⇒薬師仏
ーなさる
- 作者はどんな少女だったと考えられる?
薬師仏を作ってまで、物語がたくさんある京都に上ることを祈願する点から、ひたむきな情熱家だと考えられる。
品詞分解
いみじく | シク活用形容詞「いみじ」連用形
非常に、たいそうに ゴロゴ93番 |
心もとなき | ク活用形容詞「こころもとなし」連体形
「こころもとなし」はこころが落ち着かない状態 「気がかりだ、心配だ、じれったい、待ち遠しい」など ここはじれったい ゴロゴ234番 |
まま | 名詞 |
に、 | 格助詞 |
等身 | 名詞 |
に | 格助詞 |
薬師仏 | 名詞
薬師瑠璃光如来の略称。 十二の誓願を発して衆生の苦しみを癒やしてくれる。 特に病気を癒やし、現世の希望を叶えてくれると信じられていた。 |
を | 格助詞 |
造り | ラ行四段活用動詞「造る」連用形 |
て、 | 接続助詞 |
手洗ひ | 名詞 |
など | 副助詞 |
し | サ行変格活用動詞「す」連用形 |
て、 | 接続助詞 |
人間 | 「ひとま」名詞
人のいない間、雨間=雨の降っていない間と同じ使い方 |
に | 格助詞 |
みそかに | ナリ活用形容動詞「みそかなり」連用形
ひそかに こっそりと ゴロゴ472番 |
入り | ラ行四段活用動詞「入る」連用形 |
つつ | 接続助詞 |
「京 | 名詞 |
に | 格助詞 |
とく | ク活用形容詞「とし」連用形
早く、「疾し」と書く。音便化すると「とう」ともなる。 ゴロゴ370番 |
あげ | ガ行下二段活用動詞「あぐ」連用形 |
給ひ | ハ行四段活用動詞「給ふ」連用形
尊敬語 補助動詞 作者⇒薬師仏 ーなさる ゴロゴ335番 |
て、 | 接続助詞 |
物語 | 名詞 |
の | 格助詞 |
多く | ク活用形容詞「多し」連用形 |
候ふ | ハ行四段活用動詞「候ふ」終止形
丁寧語 本動詞 作者⇒薬師仏 ーございます ゴロゴ265番 |
なる、 | 伝聞の助動詞「なり」連体形
接続は終止形・ラ変型は連体形 「多く候ふなる」でたくさんございますと聞いている |
ある | ラ行変格活用動詞「あり」連体形 |
限り | 名詞 |
見せ | サ行下二段活用動詞「見す」連用形 |
給へ。」 | ハ行四段活用動詞「給ふ」命令形
尊敬語 補助動詞 作者⇒薬師仏 ーなさる ゴロゴ335番 |
と、 | 格助詞 |
身 | 名詞 |
を | 格助詞 |
捨て | タ行下二段活用動詞「捨つ」連用形 |
て、 | 接続助詞 |
額(ぬか) | 名詞 額 ひたい |
を | 格助詞 |
つき | カ行四段活用動詞「つく」連用形 |
祈り申す | 謙譲語
本動詞 サ行四段活用動詞「祈り申す」連体形 お祈り申し上げる |
ほど | 名詞 |
に | 格助詞 |
十三 | 名詞 |
に | 格助詞 |
なる | ラ行四段活用動詞「なる」連体形 |
年、 | 名詞 |
上ら | ラ行四段活用動詞「上る」未然形 |
む | 意志の助動詞「む」終止形
接続は未然形 |
と | 格助詞 |
て、 | 接続助詞 |
九月三日 | 名詞 |
門出し | サ行四段活用動詞「門出す」連用形 |
て、 | 接続助詞 |
いまたち | 名詞 |
と | 格助詞 |
いふ | ハ行四段活用動詞「いふ」連体形 |
所 | 名詞 |
に | 格助詞 |
移る。 | ラ行四段活用動詞「移る」終止形 |