不思議に思って、近寄ってみたところ、今までに見たことがない人だった。
自分(博雅の三位)も声をかけることがなく、かれ(自分と同じ直衣姿の男)も声をかけてこなかった。
このようにして、月の明るい夜には、(博雅の三位も直衣姿の男も)必ず(朱雀門に)行きあって、(笛を)吹くことが、数夜続いた。
解説
源博雅は918-980年平安時代中期の貴族で、管絃の名手。
父は醍醐天皇皇子の克明親王。従三位非参議。琵琶や和琴いに優れ、音楽にまつわるエピソードが多い。
直衣:男性貴族の日常服。
朱雀門:平安京大内裏南側の中央にある正門で朱雀大路に面する。
品詞分解
博雅 | 名詞 |
の | 格助詞 |
三位、 | 名詞 |
月 | 名詞 |
の | 格助詞 |
明かかり | ク活用形容詞「明かし」連用形 |
ける | 過去の助動詞「けり」連体形 |
夜、 | 名詞 |
直衣 | 名詞 |
にて、 | 格助詞 |
朱雀門 | 名詞 |
の | 格助詞 |
前 | 名詞 |
に | 格助詞 |
遊び | バ行四段活用動詞「遊ぶ」連用形 |
て、 | 接続助詞 |
夜もすがら | 副詞 |
笛 | 名詞 |
を | 格助詞 |
吹か | カ行四段活用「吹く」未然形 |
れ | 尊敬の助動詞「る」連用形
作者⇒博雅の三位 |
ける | 過去の助動詞「けり」連体形 |
に、 | 格助詞 |
同じ | シク活用形容詞「同じ」連体形 |
さま | 名詞 |
に、 | 格助詞 |
直衣 | 名詞 |
着 | カ行上一段活用「着る」連用形 |
たる | 存続の助動詞「たり」連体形 |
男 | 名詞 |
の、 | 格助詞 |
笛 | 名詞 |
吹き | カ行四段活用「吹く」連用形 |
けれ | 過去の助動詞「けり」已然形 |
ば、 | 接続助詞 |
「誰 | 名詞 |
なら | 断定の助動詞「なり」未然形 |
む」 | 推量の助動詞「む」終止形 |
と | 格助詞 |
思ふ | ハ行四段活用動詞「思ふ」連体形 |
ほど | 名詞 |
に、 | 接続助詞 |
そ | 代名詞 |
の | 格助詞 |
笛 | 名詞 |
の | 格助詞 |
音、 | 名詞 |
この世 | 名詞 |
に | 格助詞 |
たぐひなく | ク活用形容詞「たぐひなし」連用形 |
めでたく | ク活用形容詞「めでたし」連用形 |
聞こえ | ヤ行下二段活用動詞「聞こゆ」連用形 |
けれ | 過去の助動詞「けり」已然形 |
ば、 | 接続助詞 |
あやしく | シク活用形容詞「あやし」連用形 |
て、 | 接続助詞 |
近寄り | ラ行四段活用動詞「近寄る」連用形 |
て | 接続助詞 |
見 | マ行上一段活用動詞「見る」未然形 |
けれ | 過去の助動詞「けり」已然形 |
ば、 | 接続助詞 |
いまだ | 副詞 |
見 | マ行上一段活用動詞「見る」未然形 |
ぬ | 打消しの助動詞「ず」連体形 |
人 | 名詞 |
なり | 断定の助動詞「なり」連用形 |
けり。 | 過去の助動詞「けり」終止形 |
我 | 代名詞 |
も | 係助詞 |
もの | 名詞 |
を | 格助詞 |
も | 係助詞 |
言は | ハ行四段活用動詞「言ふ」未然形 |
ず、 | 打消の助動詞「ず」連用形 |
かれ | 代名詞 |
も | 係助詞 |
言ふ | ハ行四段活用動詞「言ふ」連体形 |
こと | 名詞 |
なし。 | ク活用形容詞「なし」終止形 |
かく | 副詞 |
の | 格助詞 |
ごとく、 | 比況の助動詞「ごとし」連用形 |
月 | 名詞 |
の | 格助詞 |
夜ごと | 名詞+接尾語 |
に | 格助詞 |
行きあひ | ハ行四段活用動詞「行きあふ」連用形 |
て | 接続助詞 |
吹く | カ行四段活用動詞「吹く」連体形 |
こと、 | 名詞 |
夜ごろ | 名詞 |
に | 格助詞 |
なり | ラ行四段活用動詞「なる」連用形 |
ぬ。 | 完了の助動詞「ぬ」終止形 |
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