さればよと、

いみじ心憂しと思へども、言はやうも知らであるほどに、二三日ばかりありてあかつきがたに門をたたく時あり。

現代語訳

私の思った通りだと、

たいそう情けないと思うが、どうしようもない気持ちで途方にくれていると、二三日たって明け方に(私の家の)門をたたく時があった。

品詞分解

「されば 感動詞

「さればよ」は連語でやっぱりそうだった。はたして思った通りだった。

予想や予感が的中した時に使います。

間投助詞 詠嘆
格助詞、
「いみじう シク活用形容詞「いみじ」連用形「いみじく」のウ音便

315の75番

心憂し ク活用形容詞「心憂し」終止形

  1. つらい、なさけない、苦しい
  2. おもしろくない、不快だ

ここは1です。

315の61番

格助詞、
思へ ハ行四段活用動詞「思ふ」已然形
ども 接続助詞、
言は ハ行四段活用動詞「言ふ」未然形

「いはむやうも知らで」でどう言ってよいかわからないで。言いやる方法もわからないで。

なんとも言いようがなく 茫然自失して取り乱して、途方にくれている様子です。

婉曲の助動詞「む」連体形。

接続は未然形
◯/◯/む/む/め/◯

やう 名詞

方法、すべ

係助詞
知ら ラ行四段活用動詞「知る」未然形
接続助詞 打消
ある ラ行変格活用動詞「あり」の連体形
ほど 名詞
格助詞、
二日、 名詞
三日 名詞
ばかり 副助詞
あり ラ行変格活用動詞「あり」の連用形
接続助詞、
暁がた 名詞

夜明けに近いがまだ暗いとき。

「がた」はおおよそーのころを表す接尾語。

格助詞
名詞
格助詞
たたく カ行四段活用動詞「叩く」連体形
名詞
あり ラ行変格活用動詞「あり」の終止形。

な/めりと思ふに、

憂くてあけさせ/ねば、例の家とおぼしきところにものしたり。つとめてなほもあらと思ひて、

現代語訳

夫兼家が帰ってきたようだと思うと、不愉快なので私の家の門を開けさせないでいると、(夫兼家はそのまま)いつもの(町の小路の女の)家と思われるところに行ってしまった。

翌朝、やはりこのままではいられないと思って、

テストに出るかも

「さ」は何をさすか?

兼家が筆者のもとを訪れてきたことをさす

品詞分解

「さ 副詞

ここでは兼家が筆者のもとに訪れてきたことを指しています。

「さなめり」であの人が訪ねてきたらしい。

断定の助動詞「なり」連体形「なる」撥音便「なん」の「ん」の無表記形

接続は連体形または体言

なら/なり・に/なり/なる/なれ/なれ

「なり」は現代語の「そうです」の「です」にあたります。

「そう」は夫兼家の訪れのこと=名詞=体言

めり 婉曲の助動詞「めり」終止形 らしい

「なめり」で「であるらしい」「であるようだ」

接続は終止形、ラ変型は連体形

◯/めり/めり/める/めれ/◯

格助詞
思ふ ハ行四段活用動詞「思ふ」連体形
接続助詞、
憂く ク活用形容詞「憂し」連用形

情けない 気が進まない いやだ つれない 憂鬱だ 苦しい 不愉快だ

315の61番

接続助詞、
開け カ行下二段活用「開く」未然形
させ 使役の助動詞「さす」未然形

四段・ナ変・ラ変以外(上一段、下一段、上二段、下二段、カ変、サ変)の未然形

させ/させ/さす/さする/さすれ/させよ

打消の助動詞「ず」已然形

接続は未然形

[な]ず・ざら/[に]ず・ざり/ず/ぬざる/ね・ざれ/ざれ

接続助詞、
名詞 315の慣用句

「例の家」は町の小路の女の家ですね。

格助詞
名詞
格助詞
おぼしき シク活用形容詞「おぼし」連体形

思われる

ところ 名詞
格助詞
ものし サ行変格活用「ものす」連用形

ある、いる、行く、来るなどの動作を具体的な表現をせずに漠然と婉曲に表します。

ここではgoの意味で兼家が町の小路の女の家だと思われるところに行っちゃったんですね。

たり 完了の助動詞「たり」の終止形。

接続は連用形

たら/たり/たり/たる/たれ/たれ

つとめて、 名詞

翌朝

ゴロゴ354番

315の126番

「なほ 副詞

315の133番

「なほもあらじ」=「なほあらじ」やはりこのままにしておくわけにもいくまい

係助詞 強意
あら ラ行変格活用「あり」未然形
打消意志の助動詞「じ」の終止形

接続は未然形
◯/◯/じ/じ/じ/◯

格助詞
思ひ ハ行四段活用「思ふ」連用形
接続助詞、

 

なげきつつ ひとり寝る夜の あくるまは
いかに久しき ものとかは/知る

と、例よりもひきつくろひて書きて、うつろひたる菊にさしたり

現代語訳

(私が家の門を開けさせるほんのわずかな時間さえも待てずに立去ってしまうようなあなたには)

(なかなか帰ってこないあなたを待ち望んで悲しみにくれて嘆きながら)一人で(寂しく)寝る夜が明けるまでの時間が

どれだけ長いものか、おわかりになるのでしょうか。いえ、きっとあなたはおわかりにならないでしょうね。

と、いつもよりは筆跡にも注意して丁寧に書いて、(自分から町の小路の女に気持ちが変わってしまった兼家のように)色が変わってしまった菊の枝に結びつけ(て兼家に送っ)た。

品詞分解

嘆き カ行四段活用「嘆く」連用形
つつ 接続助詞
ひとり 名詞
寝る ナ行下二段活用「寝(ぬ)」連体形

眠る。横になる。

名詞
格助詞
あくる カ行下二段活用「あく」連体形

夜が「明ける」に戸を「開ける」意味が掛けられています。

名詞

係助詞
いかに 副詞
久しき シク活用形容詞「久」連体形
もの 名詞
格助詞
かは 係助詞 (反語)(係り結び)
知る ラ行四段活用「知る」連体形(「かは」結び)
格助詞、
名詞

いつも、ふだん

より 格助詞
係助詞
ひきつくろひ ハ行四段活用「ひきつくろふ」連用形

筆跡にもことさら注意して

接続助詞
書き カ行四段活用「書く」連用形
接続助詞、
移ろひ ハ行四段活用「移ろふ」連用形

  1. 移動していく 移り住む
  2. (状態や事情・状況が)変わっていく
  3. (色が)あせていく かわっていく
  4. (紅葉などが)色づく

ここは3です

「うつろひたる菊」で色変わりした菊

夫兼家のこころが他の女へ移ったことほのめかしています。

315の169番

たる 完了の助動詞「たり」の連体形

接続は連用形
たら/たり/たり/たる/たれ/たれ

名詞
格助詞
さし サ行四段活用「さす」連用形

このさすは結ぶ

たり 完了の助動詞「たり」の終止形。

接続は連用形
たら/たり/たり/たる/たれ/たれ

 

返りごと、

「明くるまでも試みとしつれど、とみなる召使ひの来合ひたり/つればなむ。

いとことわりなり/つるは。

現代語訳

(私の手紙への兼家からの)返事に、「(門が開くのを)夜が明けるまでも待ってみようとおもったけれど、急用をつげる使者が自分のもとにやって来たのに出会ったので。

(門があくまで待たずにすぐにどこかに行ってしまったとあなたが怒るのも)たいそうもっともなことです。

品詞分解

 返り事 名詞

(兼家からの)返事

「あくる カ行下二段活用「あく」連体形

ここも「戸を開ける」と「夜が明ける」がかかっています

まで 副助詞
係助詞
こころみ マ行上一段活用「こころみる」未然形
意志の助動詞「む」の終止形

接続は未然形
◯/◯/む/む/め/◯

格助詞
サ行変格活用動詞「す」連用形
つれ 完了の助動詞「つ」の已然形

接続は連用形
て/て/つ/つる/つれ/てよ

接続助詞、
とみなる ナリ活用形容動詞「とみなり」連体形

急だ にわかだ

ゴロゴ374番

315の236番

召使 名詞
格助詞
来合ひ ハ行四段活用「来あふ」連用形

来合わせ

たり 完了の助動詞「たり」の連用形

接続は連用形
たら/たり/たり/たる/たれ/たれ

つれ 完了の助動詞「つ」の已然形

接続は連用形
て/て/つ/つる/つれ/てよ

接続助詞
なむ 係助詞。

この後に「ほかに参りつる(ほかに行ってしまった)」「え参らざる(行くことができない)」などが省略されている

いと 副詞
ことわりなり ナリ活用形容動詞「理なり」連用形

もっともだ、いうまでもない

「ことわり」は道理、当然なこと

315の119番

つる 完了の助動詞「つ」の連体形

接続は連用形
て/て/つ/つる/つれ/てよ

終助詞(詠嘆)

 

げにやげに冬の夜なら/ぬまきの戸も遅くあくるはわびしかりけり

現代語訳

ほんとうに、冬の夜でないまきの板戸でさえも(すぐに開けてくれずに)開くのがおそくなるのは寂しいものですよ。

(ましてこの寒い冬の夜のことなので余計にやりきれず寂しいものです。(だから他の女のところにいっちゃうのもしょうがなくない?))

品詞分解

げに 副詞

本当に 全く いかにも

315の135番

間投助詞
げに 副詞

「げにやげに」でまったくほうとうに「げに」をさらに強めています

315の135番

名詞
格助詞
名詞
なら 断定の助動詞「なり」未然形

接続は体言連体形など
なら/なり・に/なり/なる/なれ/なれ

打消の助動詞「ず」連体形

接続は未然形

[な]ず・ざら/[に]ず・ざり/ず/ぬざる/ね・ざれ/ざれ

真木 名詞

杉や檜などの良材を表す美称です

格助詞
名詞
係助詞
おそく ク活用形容詞「おそし」連用形
あくる カ行下二段活用「あく」連体形

「(夜がおそく)明ける」と「(戸をおそく)開ける」を掛けています

係助詞
わびしかり シク活用形容詞「わびし」連用形

つらい

さびしい ものがなしい

貧しい みすぼらしい

ゴロゴ554番

315の219番

けり 詠嘆の助動詞「けり」終止形

接続は連用形
けら/◯/けり/ける/けれ/◯

 

さてもいと/あやしかりつるほどに、ことなしびたる

しばしは、忍びたるさまに、「内裏に。」など言ひつつあるべきを、いとどしこころづきなく思ふこと限りなきや。

現代語訳

それにしても、(私がこれほど辛い思いをしているというのに、あの夫は)たいそう不思議になるほどしらばっくれれている。

しばらくは遠慮している様子で「宮中に(用事があるので参内しなくてはいけない=からあなたのもとには行けません)」などと言い続けているべきなのに、(そういう言い訳もしないで平然としている夫の様子をみるにつけ)いっそう不愉快に思うことこの上ない。

品詞分解

さても 接続詞

それにしても

「さても」は

  1. そうして
  2. そうであっても
  3. それにしても ところで
  4. それにしてもまあ、なんとまあ

の意味があります。

いと 副詞
あやしかり シク活用形容詞「あやし」連用形

  1. 不思議だ 異常だ
  2. 賤しい 身分が低い
  3. 粗末だ

ここは1ですね

ゴロゴ38番

315の56番

つる 完了の助動詞「つ」の連体形

接続は連用形
て/て/つ/つる/つれ/てよ

ほど 名詞
格助詞、
ことなしび バ行上二段活用「ことなしぶ」連用形

そしらぬふりをする

ゴロゴ244番

たる 存続の助動詞「たり」連体形

接続は連用形
たら/たり/たり/たる/たれ/たれ

しばし 副詞
係助詞、
忍び バ行四段活用「忍ぶ」連用形

  1. 人目を避ける 人目を避けて秘密にする
  2. 恋い慕う
  3. こらえる

気づかないようにする 包み隠す様子で宮中に行くと言ってくれればいいのに、

平然としているのが気に食わないんですね。

315の37番

たる 存続の助動詞「たり」連体形

接続は連用形
たら/たり/たり/たる/たれ/たれ

さま 名詞
断定の助動詞「なり」連用形

接続は体言連体形など
なら/なり・に/なり/なる/なれ/なれ

「内裏 名詞
格助詞
など 副助詞
言ひ ハ行四段活用「言ふ」連用形
つつ 接続助詞
係助詞 (係り結び)
ある ラ行変格活用動詞「あり」連体形
べき 当然の助動詞「べし」連体形 (係り結びは流れている)

接続は終止形・ラ変型は連体形

べく・べから/べく・べかり/べし/べき・べかる/べけれ/◯

接続助詞、
いとどしう シク活用形容詞「いとどし」連用形「いとどしく」のウ音便

「いとどし」はいよいよ激しい、ますますはなはだしい。

very muchと言った感じでしょうか。

心づきなく ク活用形容詞「こころづきなし」連用形

不愉快だ 気に食わない

ゴロゴ228番

315の205番

思ふ ハ行四段活用「思ふ」連体形
こと 名詞
係助詞、(係り結び)
限りなき ク活用形容詞「限りなし」連体形(「ぞ」結び)
間投助詞。(詠嘆)

テスト対策

筆者が夫の兼家に対してとった態度や行動を整理すると?

  1. 兼家が愛人に送る手紙を発見したので、私は女がいることを知っていますからね、バレてますよということだけでも兼家に知られようと歌を詠む⇒筆者の夫兼家へのあてつけの対応が見られる
  2. 「内裏にのがるまじかりけり」と行って筆者の家からでかけた兼家を召使いに尾行させて、町の小路の女の存在を突き止める
  3. 「あかつきがたに門をたたく」夜明け前ごろに兼家が筆者のもとに訪ねてきたらしいと思うと不愉快になって門前払いをする
  4. このまま黙ってなんていられないと筆跡に注意して体裁を整えた歌をかいて、色変わりした菊に挿して送る
  5. 筆者に対する気遣いもなく、平然とした顔で町の小路の女のもとに通う兼家に不快感を募らせる

兼家に対する筆者の感情がよく表現されている部分は?

  • さればよと、いみじう心憂しと思へども
  • さなめりと思ふに、憂くて、開けさせねば
  • いとどしう心づきなく思ふことぞ、限りなきや

「『内裏に』など言ひつつぞあるべきを」という筆者の気持ちは?

兼家がよそに愛人を作ってきたのだけでも十分に気に入らないのに、まして筆者ににたいして全く気遣いをすることもなく、平然としている兼家の態度に深く憤っている。

次の「らむ」を文法的に説明すると?

  1. 人のもとに遣らむ①としける
  2. らむ②とすらむ③

①ラ行四段活用動詞「遣る」の未然形活用語尾「ら」+意志の助動詞「む」の終止形

②ラ行四段活用動詞「なり」の未然形活用語尾「ら」+推量の助動詞「む」の終止形

③現在推量の助動詞「らむ」の連体形

③だけ文法的に異なりますね。

 

「げにやげに」の歌は「嘆きつつ」の歌をどのように受けているか、筆者と兼家の心情を考えてみると?

「嘆きつつ」からわかる筆者の心情

「あなたは私が門をあけるまでのほんのわずかな時間でさえ待つことを出来ずに、よその女のもとに行ってしまったではありませんか。それなのに私は、門を開けるまでのじかんよりももっともっと長い時間を、たった一人でさびしく過ごしているのですよ」と兼家の愛情が衰えたことにうらみを述べて、兼家の行動を非難し、彼の心を自分に振り向けようと心を込めて読んでいる。

「げにやげに」からわかる兼家の心情

まず、妻である筆者が怒るのはもっともだとし、「あくる」の語を使うなど「嘆きつつ」の歌を全面的に受け止めたふりはしているが、「だが、すぐに戸を開けてくれないで、時間が経って遅く開けるのは、わびしくつらいことです。まして寒い冬の夜に待たされるのですから、やりきれませんでしたよ」と実際には筆者の嘆きには少しも触れておらず、ただただ、自分勝手に自分のわびしさを主張している。

 

 

参考になれば幸いです。

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