『無名草子』紫式部のこと品詞分解現代語訳助動詞定期テスト対策
『無名草子』紫式部について、清少納言と紫式部の品詞分解と現代語訳です。定期テスト対策にご利用ください。助動詞、敬語、指示語が指しているものに注意して、受験にも役立てていただけると幸いです。
『無名草子』紫式部について清少納言と紫式部の現代語訳のみはこちら
『無名草子』紫式部のこと品詞分解と現代語訳解説
薄緑色のマーカーが助動詞です。
黄色のマーカーは受験に向けて覚えておきたい=古文単語集に載っていそうな単語です。
オレンジのマーカーは係り結びです。助動詞と重なっている場合があります。
緑色のマーカーは敬語です
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315は『読んでみて覚える重要古文単語315』をゴロゴは『古文単語集ゴロ565』の対応する番号を指しています
『無名草子』紫式部のこと本文=黒字 現代語訳=青字、品詞分解と解説
「繰り言のやうには侍れど、
くどくどと同じことを繰り返して言うようですが、
尽つきもせず、うらやましくめでたく侍るは、
いくらいっても尽きることもなく、うらやましくすばらしうございますのは(次のお話です)、
繰り言 | 名詞 |
の | 格助詞 |
やうに | 比況の助動詞「やうなり」の連用形 接続は連体形助詞「の」「が」 なら/なり・に/なり/なる/なれ/なれ 名詞「やう(様)」に断定の助動詞「なり」が付いて一語化したもの。 |
は | 係助詞 |
侍れ | 丁寧語 補助動詞 ラ行変格活用動詞「侍り」已然形 |
ど、 | 接続助詞 逆接 |
尽き | カ行上二段活用動詞「尽く」連用形 |
も | 係助詞 |
せ | サ行変格活用「す」未然形 補助動詞 |
ず、 | 打消の助動詞「ず」連用形。 接続は未然形 [な]ず・ざら/[に]ず・ざり/ず/ぬざる/ねざれ/ざれ |
うらやましく | シク活用形容詞「うらやまし」連用形 |
めでたく | ク活用形容詞「めでたし」連用形 素晴らしい、 |
侍る | 丁寧語 補助動詞 ラ行変格活用動詞「侍り」連体形 |
は、 | 係助詞、 |
大斎院より上東門院、
大斎院(=選子内親王)から上東門院(=一条天皇中宮彰子)に、
『つれづれ慰みぬ/べき物語や/候ふ。』
『退屈を紛らわすことのできる物語はございますか。』
と尋ね参らせさせ給へり/けるに、
とお尋ね申し上げなさったところ、
大斎院
(だいさいいん) |
名詞
選子内親王 村上天皇第十の皇女 母は中宮安子。円融院、12歳で賀茂斎院になり69歳まで5代の間斎院として神に奉仕、時の人は大斎院と呼んだ。72歳で薨(こう)ぜられた 参考 富倉徳次郎『無名草子』評解P314 |
より | 格助詞 |
上東門院、 | 名詞
一条天皇中宮彰子 |
「つれづれ | 名詞
手持ち無沙汰なこと 退屈 |
慰み | マ行四段活用動詞「慰む」連用形 |
ぬ | 強意の助動詞「ぬ」終止形。 接続は連用形 な/に/ぬ/ぬる/ぬれ/ね◎強意 完了※つべし、ぬべしは強意 |
べき | 可能の助動詞「べし」連体形 接続は終止形、ラ変型は連体形 べく・べから/べく・べかり/べし/べき・べかる/べけれ/◯推量 意志 ◎可能 当然 命令 ◯適当適当で訳すなら(退屈を紛らわすのに)「ちょうどいい」(物語) |
物語 | 名詞 |
や | 係助詞 疑問 係り結び |
候ふ。」 | 丁寧語 「あり・居り」の丁寧語 ハ行四段動詞「さぶらふ」連体形「や」の結び 大斎院→上東門院への敬意 ございます |
と | 係助詞 |
尋ね | ナ行下二段活用動詞「尋ぬ」連用形 |
参らせ | 謙譲語 補助動詞 サ行下二段活用動詞「参らす」未然形 話し手→上東門院=彰子への敬意 |
させ | 尊敬の助動詞「さす」連用形 話し手⇒大斎院=選子内親王への敬意 接続は未然形 させ/させ/さす/さする/さすれ/させよ「給ふ」と合わせて二重敬語 |
給へ | 尊敬語 補助動詞 ハ行四段活用動詞「給ふ」已然形 話し手⇒大斎院=選子内親王への敬意 「なさる」 |
り | 完了の助動詞「り」連用形 接続はサ変の未然形・四段の已然形 ら/り/り/る/れ/れ |
ける | 過去の助動詞「けり」連体形 接続は連用形 けら/◯/けり/ける/けれ/◯ |
に、 | 接続助詞 |
紫式部を召して、
(上東門院は)紫式部をお呼びになって、
『何をか参らすべき。』と仰せられ/ければ、
(上東門院→紫式部)『何を差し上げたらよいかしら。』とおっしゃったので、
紫式部 | 名詞 |
を | 格助詞 |
召し | 尊敬語 「呼ぶ」の尊敬語 サ行四段活用動詞「召す」連用形 作者→上東門院=彰子への敬意 ◎およびになる お招きになる お取り寄せになる 召し上がる お飲みになる お召しになる お乗りになる |
て、 | 接続助詞 |
『何 | 代名詞 |
を | 格助詞 |
か | 係助詞 疑問 係り結び |
参らす | 謙譲語 「与ふ」の謙譲語 サ行下二段活用動詞「参らす」終止形 上東門院=彰子→大斎院への敬意 |
べき。』 | 適当の助動詞「べし」連体形 接続は終止形、ラ変型は連体形 べく・べから/べく・べかり/べし/べき・べかる/べけれ/◯ |
と | 格助詞 |
仰せ | 尊敬語 「言ふ」の尊敬語 本動詞 サ行下二段活用動詞「仰(おほ)す」未然形 話し手⇒上東門院への敬意 (「おほせらる」や「おほせたまふ」全体で)おっしゃる 二重敬語 |
られ | 尊敬の助動詞「らる」連用形 接続は四段・ナ変・ラ変以外の未然形 られ/られ/らる/らるる/らるれ/られよ 話し手→上東門院への敬意 |
けれ | 過去の助動詞「けり」已然形 接続は連用形 けら/◯/けり/ける/けれ/◯ |
ば、 | 接続助詞 順接 確定条件 |
『めづらしきものは、何か侍るべき。新しく作りて参らせ給へかし。』
(紫式部→上東門院)『珍しいものは、何かございましょうか。(いいえ、ございません。)新しく作って差し上げなさいませ。』
と申しければ、
と(紫式部が上東門院に)申し上げたところ、
『めづらしき | シク活用形容詞「めづらし」連体形
315-16番 すばらしい |
もの | 名詞 |
は、 | 係助詞 提示 |
何 | 代名詞 |
か | 係助詞 反語 係り結び |
侍る | 丁寧語 「あり・居り」の丁寧語 本動詞 ラ行変格活用動詞「侍り」連体形 紫式部→上東門院=彰子への敬意 |
べき。 | 推量の助動詞「べし」連体形 接続は終止形、ラ変型は連体形 べく・べから/べく・べかり/べし/べき・べかる/べけれ/◯ 「か」と係り結び◎推量 意志 可能 当然 命令 適当 |
新しく | シク活用形容詞「新し」連用形 |
作り | ラ行四段活用動詞「作る」連用形 |
て | 接続助詞 |
参らせ | 謙譲語 サ行下二段活用動詞「参らす」連用形 紫式部→大斎院への敬意 |
給へ | 尊敬語 補助動詞 ハ行四段活用動詞「給ふ」已然形 作者⇒上東門院への敬意 「なさる」 |
かし。』 | 終助詞 念押し |
と | 格助詞 引用 |
申し | 謙譲語 本動詞 言うの謙譲語 サ行四段活用動詞「申す」連用形 申し上げる |
けれ | 過去の助動詞「けり」已然形 接続は連用形 けら/◯/けり/ける/けれ/◯ |
ば、 | 接続助詞 順接確定条件 |
『作れ。』と仰せられ/けるを承りて、
(上東門院が紫式部に)『(では、お前が)お作りなさい。』とおっしゃったのを(紫式部が)お受けして、
『作れ。』 | ラ行四段活用動詞「作る」命令形 |
と | 格助詞 引用 |
仰せ | 尊敬語 本動詞 「言ふ」の尊敬語 話し手→上東門院=彰子への敬意おほせらるで二重敬語 おっしゃる |
られ | 尊敬の助動詞「らる」連用形 接続は四段・ナ変・ラ変以外の未然形 られ/られ/らる/らるる/らるれ/られよ受身 可能 自発 ◎尊敬 |
ける | 過去の助動詞「けり」連体形 接続は連用形 けら/◯/けり/ける/けれ/◯ |
を | 格助詞 対象 |
承り | 謙譲語 本動詞「受く・聞く」の謙譲語 「承諾する」「引き受ける」の意の謙譲語 ラ行四段活用動詞「承る」連用形 お受けする お引き受け申し上げる |
て、 | 接続助詞 |
『源氏』を作りたり/けるこそ、いみじく/めでたく侍れ。」
『源氏(物語)』を作ったことは、たいそうすばらしいことでございます。」
と言ふ人侍れば、また、
と言う人がございますところ、一方で(もう一人がいうに)は、
『源氏』 | 名詞 |
を | 格助詞 対象 |
作り | ラ行四段活用動詞「作る」連用形 |
たり | 完了の助動詞「たり」連用形 接続は連用形 たら/たり/たり/たる/たれ/たれ |
ける | 過去の助動詞「けり」連体形 接続は連用形 けら/◯/けり/ける/けれ/◯ |
こそ、 | 係助詞 強意 係り結び |
いみじく | シク活用形容詞「いみじ」連用形
すばらしい ひどい とても 315-75番 |
めでたく | ク活用形容詞「めでたし」連用形
すばらしい 315-44番 |
侍れ。」 | 丁寧語 補助動詞 ラ行変格活用動詞「侍り」已然形 係り結び 「こそ」結び |
と | 係助詞 引用 |
言ふ | ハ行四段活用動詞「言ふ」連体形 |
人 | 名詞 |
侍れ | 丁寧語 本動詞 「あり・居り」の丁寧語 ラ行変格活用動詞「侍り」已然形 作者→読み手への敬意 |
ば、 | 接続助詞 順接確定条件 |
また、 | 接続詞 |
「いまだ宮仕へもせで里に侍りける折、
「(紫式部が)まだ宮仕えもしないで実家におりました時、
「いまだ | 副詞 |
宮仕へ | 名詞 |
も | 係助詞 強意 |
せ | サ行変格活用「す」未然形 |
で | 接続助詞 打消 接続は未然形 |
里 | 名詞 |
に | 格助詞 場所 |
侍り | 丁寧語 補助動詞「あり・居り」の丁寧語 ラ行変格活用動詞「侍り」連用形 話し手→聞き手への敬意 |
ける | 過去の助動詞「けり」連体形 接続は連用形 けら/◯/けり/ける/けれ/◯ |
折、 | 名詞 |
かかるもの作り出でたり/けるによりて、召し出でられて、
このようなもの(=『源氏物語』)を作り出したことによって、(評判になり宮中に)お呼びよせられて、
かかる | ラ行変格活用動詞「かかり」連体形 副詞「かく」+ラ変動詞「あり」からなる「かくあり」の変化した語。 |
もの | 名詞 |
作り出で | ダ行下二段活用動詞「作り出づ」連用形 |
たり | 完了の助動詞「たり」連用形 接続は連用形 たら/たり/たり/たる/たれ/たれ |
ける | 過去の助動詞「けり」連体形 接続は連用形 けら/◯/けり/ける/けれ/◯ |
に | 格助詞 原因・理由※ |
より | ラ行四段活用動詞「よる」連用形 |
て、 | 接続助詞 |
召し出で | 尊敬語 本動詞 ダ行下二段活用動詞「召し出づ」未然形 作者→紫式部を呼び出した偉い人への敬意お呼び出しになる お呼び寄せになる |
られ | 受身の助動詞「らる」連用形 接続は四段・ナ変・ラ変以外の未然形 られ/られ/らる/らるる/らるれ/られよ |
て、 | 接続助詞 |
それゆゑ紫式部といふ名は付けたり、
そ(物語の登場人物の名)のため紫式部という名をつけた、
それゆゑ | 接続詞 |
紫式部 | 名詞 |
と | 係助詞 |
いふ | ハ行四段活用動詞「言ふ」連体形 |
名 | 名詞 |
は | 係助詞 |
付け | カ行下二段活用動詞「付く」連用形 |
たり、 | 完了の助動詞「たり」連用形 接続は連用形 たら/たり/たり/たる/たれ/たれ |
とも申すは、いづれかまことにて侍らむ。
とも申すのは、どちらが本当なのでありましょうか。
と | 格助詞 引用 |
も | 係助詞 |
申す | 謙譲語 本動詞 「言ふ」の謙譲語 サ行四段活用動詞「申す」連体形 作者→読み手への敬意 |
は、 | 係助詞 |
いづれ | 代名詞 |
か | 係助詞 疑問 係り結び |
まこと | 名詞 |
に | 断定の助動詞「なり」連用形 接続は体言連体形など なら/なり・に/なり/なる/なれ/なれ |
て | 接続助詞 補助動詞に続ける |
侍ら | 丁寧語 補助動詞 ラ行変格活用動詞「侍り」未然形 作者→読み手への敬意 |
む。 | 推量の助動詞「む」連体形 接続は未然形 ◯/◯/む/む/め/◯ 係助詞「か」結び ◎推量・意志・勧誘・仮定・婉曲・適当 |
その人の日記といふもの侍りしにも、
その人(紫式部)の日記(=『紫式部日記』)というものがございましたが、
そ | 代名詞 |
の | 格助詞 連体修飾用法 |
人 | 名詞 |
の | 格助詞 連体修飾用法 |
日記 | 名詞 |
と | 係助詞 |
いふ | ハ行四段動詞「言ふ」連体形 |
もの | 名詞 |
侍り | 丁寧語 補助動詞 ラ行変格活用動詞「侍り」連用形 「あり・居り」の丁寧語 作者→読み手への敬意 |
し | 過去の助動詞「き」連体形 接続は連用形(カ変・サ変は特別) せ/◯/き/し/しか/◯ |
に | 格助詞 場所 |
も、 | 係助詞 添加 |
「参りける初めばかり、恥づかしうも、
(その紫式部の日記にも、)「(私が宮仕えに)参内したはじめの頃は、(源氏物語を書くような評判の人なので、あっても)気恥ずかしくもあり、
心にくくも、また添ひ苦しうもあらむず/らむと、
奥ゆかしくも、またつき合いにくくもあるだろうと、
おのおの思へり/けるほどに、
(他の女房たちが)各自(私=紫式部に対して)思っていたところ、
『参り | 謙譲語「行く」の謙譲語 ラ行四段活用動詞「参る」連用形 紫式部→上東門院=彰子への敬意 参上する |
ける | 過去の助動詞「けり」連体形 接続は連用形 けら/◯/けり/ける/けれ/◯ |
初め | 名詞 |
ばかり、 | 副助詞 範囲・程度 体言、副詞、活用語の終止形・連体形などに付く。◯範囲・程度ほど、ぐらい・限定だけ |
恥づかしう | シク活用形容詞「恥づかし」連用形「恥かしく」ウ音便 気後れする 気後れするほど立派だ 打ち解けられない |
も、 | 係助詞、並列 |
心にくく | ク活用形容詞「心にくし」連用形 心惹かれる 奥ゆかしい 上品だ |
も、 | 係助詞、並列 |
また | 接続詞 |
添ひ苦しう | シク活用形容詞「添ひ苦し」連用形「添ひ苦しく」ウ音便 |
も | 係助詞 並列 |
あら | ラ行変格活用動詞「あり」未然形 |
むず | 推量の助動詞「むず(んず)」終止形 接続は未然形 ◯/◯/むず/むずる/むずれ/◯ |
らむ | 現在推量の助動詞「らむ」終止形 接続は終止形(ラ変型は連体形) ◯/◯/らむ/らむ/らめ/◯ |
と、 | 格助詞 引用 |
おのおの | 名詞 |
思へ | ハ行四段活用動詞「思ふ」已然形 |
り | 存続の助動詞「り」連用形 接続はサ変の未然形・四段の已然形 ら/り/り/る/れ/れ |
ける | 過去の助動詞「けり」連体形 接続は連用形 けら/◯/けり/ける/けれ/◯ |
ほど | 名詞 |
に、 | 格助詞 時 |
いと思はずにほけづき、かたほにて、
大変意外にもぼんやりしていて、未熟者で、
一文字をだに引かぬさまなり/ければ、
(人前では)「一」という文字さえ書き記さない様子であったので、
いと | 副詞 |
思はずに | ナリ活用形容動詞「思はずなり」連用形
意外だ |
ほけづき、 | カ行四段活用動詞「ほけづく」連用形 |
かたほに | ナリ活用形容動詞「片秀・偏なり(かたほなり)」連用形 315-232番 不完全だ 未熟だ不器量だ |
て、 | 接続助詞 |
一文字 | 名詞 |
を | 格助詞 対象 |
だに | 副助詞 類推 |
引か | カ行四段活用動詞「引く」未然形 |
ぬ | 打消の助動詞「ず」連体形 接続は未然形 [な]ず・ざら/[に]ず・ざり/ず/ぬ・ざる/ね・ざれ/ざれ |
さま | 名詞 |
なり | 断定の助動詞「なり」連用形 接続は体言連体形など なら/なり・に/なり/なる/なれ/なれ |
けれ | 過去の助動詞「けり」已然形 接続は連用形 けら/◯/けり/ける/けれ/◯ |
ば、 | 接続助詞 順接確定条件 |
かく思はずと、友達ども思はる。』などこそ見えて侍れ。
こう(大変意外にもぼんやりしていて、未熟者で「一」という文字もかかないこと)とは思わなかったと、仲間の女房達はお思いになる。』などと見えております。
かく | 副詞 |
思は | ハ行四段活用動詞「思ふ」未然形 |
ず | 打消の助動詞「ず」連用形。 接続は未然形 [な]ず・ざら/[に]ず・ざり/ず/ぬざる/ねざれ/ざれ |
と、 | 格助詞 引用 |
友達ども | 名詞+接尾語 |
思は | ハ行四段活用動詞「思ふ」未然形 |
る。』 | 尊敬の助動詞「る」終止形 接続は四段・ナ変・ラ変の未然形紫式部→友達どもへの敬意 れ/れ/る/るる/るれ/れよ |
など | 副助詞 引用 |
こそ | 係助詞 強意 係り結び |
見え | ヤ行下二段活用動詞「見ゆ」連用形 |
て | 接続助詞 補助動詞に続ける |
侍れ。 | 丁寧語 「あり・居り」の丁寧語 補助動詞 ラ行変格活用動詞「侍り」已然形 係助詞「こそ」結び 作者→読み手への敬意 |
君の御ありさまなどをば、いみじく/めでたく思ひ聞こえながら、
主君(=藤原道長)のご様子などを、たいそうすばらしく思い申し上げながら、
つゆばかりも、かけかけしく馴ならし顔に聞こえ出でぬほども、いみじく、
ほんのわずかでも、好色めいて馴れ馴れしい(態度で、道長公を)お書き申し上げないのも、すばらしく、
君 | 名詞 |
の | 格助詞 |
御ありさま | 接頭語+名詞 |
など | 副助詞 例示 |
をば、 | 連語 格助詞「を」+係助詞「は」からなる「をは」が濁音化した形。 |
いみじく | シク活用形容詞「いみじ」連用形
すばらしい ひどい とても 315-75番 |
めでたく | ク活用形容詞「めでたし」連用形 素晴らしい、315-44番 |
思ひ | ハ行四段活用動詞「思ふ」連用形 |
聞こえ | 謙譲語 補助動詞 作者→君=藤原道長への敬意 |
ながら、 | 接続助詞 並行 |
つゆ | 副詞 下に打消の語を伴って 少しも~ない まったく~ない 下の「ぬ」とむすぶ |
ばかり | 副助詞 程度 体言、副詞、活用語の終止形・連体形などに付く。範囲・程度ほど、ぐらい・限定だけ |
も、 | 係助詞、※ |
かけかけしく | シク活用形容詞「かけかけし」連用形 |
馴ならし顔に | ナリ活用形容動詞「馴らし顔なり」連用形 |
聞こえ出で | 謙譲語「言ひ出づ」の謙譲語
ダ行下二段活用動詞「聞こえ出づ」未然形 |
ぬ | 打消の助動詞「ず」連体形 接続は未然形 [な]ず・ざら/[に]ず・ざり/ず/ぬ・ざる/ね・ざれ/ざれ |
ほど | 名詞 |
も、 | 係助詞、 |
いみじく、 | シク活用形容詞「いみじ」連用形
すばらしい ひどい とても 315-75番 |
また、皇太后宮の御事を、限りなくめでたく聞こゆるにつけても、
また、皇太后宮(=彰子)の御事を、この上なくすばらしくお書き申し上げるにつけても、(その中に自分が皇太后の宮に対して)
愛敬づきなつかしく候ひけるほどのことも、君の御ありさまも、なつかしくいみじくおはしましし、
愛らしく親しくお仕えした時のことも、主君(=藤原道長)のご様子も、(彼女=紫式部に対して)親しみやすくすばらしくていらっしゃった、
また、 | 接続詞 |
皇太后宮 | 名詞 |
の | 格助詞 連体修飾用法 |
御事おんこと | 接頭語+名詞 |
を、 | 格助詞、対象 |
限りなく | ク活用形容詞「限りなし」連用形
この上なく 315-265番 |
めでたく | ク活用形容詞「めでたし」連用形
すばらしい 315-44番 |
聞こゆる | 謙譲語 「言ふ」謙譲語 本動詞 ヤ行下二段活用動詞「聞こゆ」連体形 作者→皇太后宮=上東門院=彰子への敬意 |
に | 接続助詞 |
つけ | カ行下二段活用動詞「つく」連用形 |
て | 接続助詞 |
も、 | 係助詞、添加 |
愛敬づき | カ行四段活用動詞「愛敬づく」連用形 魅力がある 愛らしさがある |
なつかしく | シク活用形容詞「なつかし」連用形
315-49番 親しみ深い 心惹かれる 好ましい |
候ひ | 謙譲語 お仕えする ハ行四段活用動詞「候ふ」連用形 作者→皇太后宮=上東門院=彰子への敬意 |
ける | 過去の助動詞「けり」連体形 接続は連用形 けら/◯/けり/ける/けれ/◯ |
ほど | 名詞 |
の | 格助詞 |
こと | 名詞 |
も、 | 係助詞 添加 |
君 | 名詞 |
の | 格助詞 |
御ありさま | 接頭語 名詞 |
も、 | 係助詞、添加 |
なつかしく | シク活用形容詞「なつかし」連用形
315-49番 親しみ深い 心惹かれる 好ましい |
いみじく | シク活用形容詞「いみじ」連用形
すばらしい ひどい とても 315-75番 |
おはしまし | 尊敬語 補助動詞 サ行四段カ行四段活用動詞「おはします」連用形 作者→君=藤原道長への敬意 |
し、 | 過去の助動詞「き」連体形 接続は連用形(カ変・サ変は特別) せ/◯/き/し/しか/◯ |
など聞こえ表したるも、心に似ぬ体にてあめる。
などとお書き表し申し上げているのも、(紫式部の内気な、控えめな)性格に似つかわしくない様子であるようだ。
など | 副助詞 引用 体言、副詞、活用語の終止形・連体形などに付く。範囲・程度ほど、ぐらい・限定だけ |
聞こえ表し | 謙譲語 「言ひ表す」の謙譲語 本動詞 サ行四段活用動詞「聞こえ表す」連用形 作者→皇太后宮=上東門院=彰子や君=藤原道長への敬意 |
たる | 存続の助動詞「たり」連体形 接続は連用形 たら/たり/たり/たる/たれ/たれ |
も、 | 係助詞、添加 |
心 | 名詞 |
に | 格助詞 対象 |
似 | ナ行上一段活用動詞「似る」未然形 |
ぬ | 打消の助動詞「ず」連体形 接続は未然形 [な]ず・ざら/[に]ず・ざり/ず/ぬ・ざる/ね・ざれ/ざれ |
体 | 名詞 |
に | 断定の助動詞「なり」連用形 接続は体言連体形など なら/なり・に/なり/なる/なれ/なれ |
て | 接続助詞 |
あ | ラ行変格活用動詞「あり」連体形「ある」の撥音便「あん」の「ん」無表記形 読む時は「あん」 |
める。 | 推定の助動詞「めり」連体形 接続は終止形・ラ変型は連体形 ◯/めり/めり/める/めれ/◯ ◎推定ようにみえる ようだ 婉曲ようだ ように思われる |
かつはまた、御心柄がらなる/べし。」
(しかし)一方でこれはまた、(彰子と道長の)ご性格(の表れ)でありましょう。」
かつ | 副詞 |
は | 係助詞 強調 |
また、 | 接続詞 |
御心柄 | 接頭語+名詞 |
なる | 断定の助動詞「なり」連体形 接続は体言連体形など なら/なり・に/なり/なる/なれ/なれ ◎断定 所在 |
べし。」 | 推量の助動詞「べし」終止形 接続は終止形、ラ変型は連体形 べく・べから/べく・べかり/べし/べき・べかる/べけれ/◯ ◎推量 意志 可能 当然 命令 適当 |
参考文献
以下の文献と各種ネット記事を参照しましたが、もし誤りがありましたら、私の責任です。コメントでご指摘いただけると幸いです。
『詳説古語辞典』 三省堂
富倉徳次郎 『無名草子評解』 有精堂出版
富倉徳次郎校訂『無名草子』岩波文庫
『松浦宮物語 無名草子』新編日本古典文学全集40 小学館
『無名草子』新潮日本古典集成 新装版
『読んで見て覚える重要古文単語315三訂版』桐原書店