東洋大学入試対策古文源氏物語2018年2月8日九条に、昔知れりける人｜ページ 3

とて、出だしたてまつる。ことさらに徒歩よりと定めたり。ならはぬ心地に、いとわびしく苦しけれど、人の言ふままに、ものもおぼえで歩みたまふ。

「いかなる罪深き身にて、かかる世にさすらふらむ。わが親、世に亡くなりたまへりとも、われをあはれと思さば、おはすらむ所に誘ひたまへ。もし、世におはせば、御顔見せたまへ」

と、仏を念じつつ、ありけむさまをだにおぼえねば、ただ、「親おはせましかば」と、ばかりの悲しさを、嘆きわたりたまへるに、かくさしあたりて、身のわりなきままに、取り返しいみじくおぼえつつ、からうして、椿市といふ所に、四日といふ巳の時ばかりに、生ける心地もせで、行き着きたまへり。

（豊後）「（岩清水八幡宮に）うち次ぎては、仏の御なかには、初瀬（が）なむ、日の本のうちには、あらたなるあらたか験しるし現したまふ尊敬語と、唐土もろこしにだに聞こえあん連体ある撥音便なり伝聞終止形接続ラ変なら連体。まして、わが国のうちにこそ、遠き国の境とても、年経ハ行下二段たまへ尊敬れ完了り已然ば、若君をばまして恵みたまひ尊敬て強意つ未然む推量む終」

とて、（姫君を初瀬参詣に）出だしたてまつる謙譲語。ことさらに徒歩かちよりと定めたり完了たり。（姫君は徒歩に）ならはぬ打消ず連体心地に、いとわびしく苦しけれ/ど、人の言ふままに、ものもおぼえヤ行下二で歩みたまふ。尊敬

（姫君）「いかなる罪深き身に断定なり連用て、かかる世にさすらふらむ現在推量らむ連体。わが親（は）、世に亡くなりたまへ尊敬たまふ已然り完了り終止とも、（仏様が）われをあはれと思さ尊敬ば、（お母様の）おはすサ変せしすするすれせよらむ現在推量らむ連体終止形接続所に誘ひたまへ尊敬たまふ命令形。もし、世におはせ未然形ば、御顔見せたまへ尊敬命令形」

と、（姫君は）仏を念じサ変つつ、（母夕顔の）ありけむさまをだにおぼえねば生前の面影さえも思い出せないので、ただ、「親おはせましか反実仮想未然形接続ば」と、ばかりの悲しさを、嘆きわたりたまへるに、かくさしあたりて、身のわりなきままに、取り返しいみじくおぼえつつ、からうして、椿市といふ所に、四日といふ巳の時ばかりに、生ける心地もせサ変で、行き着きたまへり。