いかにも、と道理に思って、
人の命というものは、これは絶えようとも、
この無常の人の世の常の夫婦仲と違って、
変わることのない二人の仲なのですよ
取り | ラ行四段活用動詞「取る」連用形 | ||||
て | 接続助詞 | ||||
見 | マ行上一段活用動詞「見る」連用形 | ||||
たまひ | ハ行四段活用動詞「給ふ」未然形 | 尊敬語 | 補助動詞 | 作者→源氏 | ~なさる |
て | 接続助詞 | ||||
はかなき | ク活用形容詞「はかなし」連体形 | ||||
言 | 名詞 | ||||
なれ | 断定の助動詞「なり」已然形 | ||||
ど | 接続助詞 | ||||
げに | 副詞 | ||||
と | 格助詞 | ||||
ことわりに | ナリ活用形容動詞「ことわりなり」連用形 | ||||
て | 接続助詞 | ||||
「命 | 名詞 | ||||
こそ | 係助詞(係り結び) | ||||
絶ゆ | ヤ行下二段活用動詞「絶ゆ」終止形 | ||||
と | 格助詞 | ||||
も | 係助詞 | ||||
絶え | ヤ行下二段活用動詞「絶ゆ」未然形 | ||||
め | 推量の助動詞「む」已然形(「こそ」結び) | ||||
定めなき | ク活用形容詞「定めなし」連体形 | ||||
世 | 名詞 | ||||
の | 格助詞 | ||||
常 | 名詞 | ||||
なら | 断定の助動詞「なり」未然形 | ||||
ぬ | 打消の助動詞「ず」連体形 | ||||
仲 | 名詞 | ||||
の | 格助詞 | ||||
契り | 名詞 | ||||
を」 | 間投助詞 |
とみにもえ渡りたまはぬを、
「いとかたはらいたきわざかな」 と、そそのかしきこえたまへば、
なよよかにをかしきほどに、えならず 匂ひて渡りたまふを、
見出だしたまふも、いとただにはあらずかし。
現代語訳
(紫の上のことが気がかりな源氏が)
すぐには宮の方へお出ましにならないのを
紫の上が、(自分が引き止めて遅くなったと人々に思われては、平凡なやきもち女とみられるし、源氏は朱雀院にも顔向けできず困るので、)
「ほんとにみっともないことでございますから」
とお促し申し上げなさると、
源氏が、(糊けがとれて)柔らかで優美なお召し物を着て、
(紫の上が焚きしめさせた)なんとも言えないほどよい匂いをさせて
(女三の宮の寝殿へ)お出かけになるのを
お見送りになられるにつけても、(紫の上のお心は、)まったくおだやかではいられないだろう。