かかることも出で来るぞか し。
若けれど、中納言をばえ思しかけずなりぬめりしを」
現代語訳
どんな事情があったとしても、どうしてもう一人妻をもうけることがあろうか。
(皇女にひかれるような)好色で、(朱雀院の懇請をことわり切れなかった)情に流されやすくなってきている自分の過ちから、
このような事態(光源氏が女三の宮を迎え入れたこと)が生じたのだ。
(雲居の雁を一途に愛す夕霧は、自分=源氏より)若いけれど、
(朱雀院は)中納言(=夕霧)を婿にとはお考えになられずじまいだったらしいのに
「などて | 副詞 |
よろづ | 名詞 |
の | 格助詞 |
こと | 名詞 |
あり | ラ行変格活用動詞「あり」終止形 |
とも | 接続助詞 |
また | 副詞 |
人 | 名詞 |
を | 格助詞 |
ば | 係助詞 |
並べ | バ行下二段活用動詞「並ぶ」連用形 |
て | 接続助詞 |
見る | マ行上一段活用動詞「見る」終止形 |
べき | 当然の助動詞「べし」連体形 |
ぞ。 | 係助詞終助詞的用法 |
あだあだしく | シク活用形容詞「あだあだし」連用形 |
心弱く | ク活用形容詞「心弱し」連用形 |
なりおき | カ行四段活用動詞「なりおく」連用形 |
に | 完了の助動詞「ぬ」連用形 |
ける | 過去の助動詞「けり」連体形 |
わ | 代名詞 |
が | 格助詞 |
おこたり | 名詞 |
に | 格助詞 |
かかる | ラ行変格活用動詞「かかり」連体形もともと副詞「かく」+ラ行変格活用動詞「あり」 |
こと | 名詞 |
も | 係助詞 |
出で来る | カ行変格活用動詞「出で来」連体形 |
ぞ | 係助詞終助詞的用法 |
かし。 | 終助詞 |
若けれ | ク活用形容詞「若し」已然形 |
ど | 接続助詞 |
中納言 | 名詞 |
を | 格助詞 |
ば | 係助詞 |
え | 副詞 |
思しかけ | カ行下二段活用動詞「思しかく」未然形 |
ず | 打消の助動詞「ず」連用形 |
なり | ラ行四段活用動詞「なる」連用形 |
ぬ | 完了の助動詞「ぬ」終止形 |
めり | 推量の助動詞「めり」連用形 |
し | 過去の助動詞「き」の連体形 |
を」 | 接続助詞 |
と、われながらつらく思し続くるに、涙ぐまれて、
「今宵ばかりは、ことわりと許したまひてむな。