これより後のとだえあらむこそ、身ながらも心づきなかるべけれ。
また、さりとて、かの院に聞こし召さむことよ」
と、思ひ乱れたまへる御心のうち、苦しげなり。
現代語訳
と我ながらついなさけなく、お思い続けられて、
ひとりでに涙ぐまれて
(三日の夜には露顕(ところあらわし)という結婚披露があり、
三日夜の餅という祝の餅を食す、最も重要な三日夜の)今夜だけは無理もないこととお許しくださいましょうね。
今日からあとに続けて、おそばを離れるようなことがあったら、それこそ
我ながら愛想が尽きることだろう。
しかしそう(おそばを離れるようなことがあったら、それこそ
我ながら愛想が尽きることだろう)かと言って、
(女三の宮を粗略にしたら、娘を託した)朱雀院のお耳にはいることになるのも気がかりでしてね。
と | 格助詞 | ||||
われ | 代名詞 | ||||
ながら | 接続助詞 | ||||
つらく | ク活用形容詞「つらし」連用形 | ||||
思し続け | カ行下二段活用動詞「思しつづく」未然形 | 尊敬語 | 本動詞 | 作者→源氏 | お思い続ける |
らるる | 自発の助動詞「らる」連体形 | ||||
に | 接続助詞 | ||||
涙ぐま | マ行四段活用動詞「涙ぐむ」未然形 | ||||
れ | 自発の助動詞「る」連用形 | ||||
て | 接続助詞 | ||||
「今宵 | 名詞 | ||||
ばかり | 副助詞 | ||||
は | 係助詞 | ||||
ことわり | ナリ活用形容動詞「ことわりなり」語幹 | ||||
と | 格助詞 | ||||
許し | サ行四段活用動詞「許す」連用形 | ||||
たまひ | ハ行四段活用動詞「給ふ」連用形 | 尊敬語 | 補助動詞 | 源氏⇒紫の上 | ~なさる |
て | 強意の助動詞「つ」未然形 | ||||
む | 推量の助動詞「む」終止形 | ||||
な。 | 終助詞 | ||||
これ | 代名詞 | ||||
より | 格助詞 | ||||
後 | 名詞 | ||||
の | 格助詞 | ||||
とだえ | 名詞 | ||||
あら | ラ行変格活用動詞「あり」未然形 | ||||
む | 仮定婉曲の助動詞「む」連体形 | ||||
こそ | 係助詞(係り結び) | ||||
身 | 名詞 | ||||
ながら | 接続助詞 | ||||
も | 係助詞 | ||||
心づきなかる | ク活用形容詞「こころづきなし」連体形 | ||||
べけれ。 | 推量の助動詞「べし」已然形(「こそ」結び) | ||||
また | 接続語 | ||||
さり | ラ行変格活用動詞「さり」終止形 | ||||
と | 格助詞 | ||||
て | 接続助詞 | ||||
か | 代名詞 | ||||
の | 格助詞 | ||||
院 | 名詞 | ||||
に | 格助詞 | ||||
聞こし召さ | サ行四段活用動詞「聞こし召す」 | 尊敬語 | 本動詞 | 源氏⇒かの院 | おききになる |
む | 推量の助動詞「む」連体形 | ||||
こと | 名詞 | ||||
よ」 | 間投助詞 | ||||
と | 格助詞 | ||||
思ひ乱れ | ラ行下二段活用動詞「思ひ乱る」連用形 | ||||
たまへ | ハ行四段活用動詞「給ふ」已然形 | 尊敬語 | 補助動詞 | 作者→源氏 | ~なさる |
る | 完了の助動詞「り」連体形 | ||||
御心 | 接頭語+名詞 | ||||
の | 格助詞 | ||||
うち | 名詞 | ||||
苦しげなり。 | ナリ活用形容動詞「苦しげなり」終止形 |
すこしほほ笑みて、 「みづからの御心ながらだに、
え定めたまふまじかなるを、ましてことわり も何も、