一事のすぐるるだにあるに、かくいづれの道もぬけ出で給ひけむは、
いにしへも侍らぬことなり。
訳
それにしても、入道澱が、「どの船に乗ろうと思うか。」
と(私の才能を見込んで)おっしゃったお言葉を耳にした時には、
われながら得意にならざるを得なかった。」
とおっしゃったそうです。
一事が人にまさっているという事でさえ大したことなのに、
この(公任卿の)ようにどの道にも人に傑出しておいでになったということは
昔(から)も(めったには)ないことでございます。
さても | 接続詞 | ||||
殿 | 名詞 | ||||
の、 | 格助詞 | ||||
『いづれ | 名詞 | ||||
に | 格助詞 | ||||
と | 格助詞 | ||||
か | 係助詞(係り結び) | ||||
思ふ』 | ハ行四段活用動詞「思ふ」連体形(「か」結び) | ||||
と | 格助詞 | ||||
のたまは | ハ行四段活用動詞「のたまふ」未然形 | 尊敬語 | 本動詞 | 大納言殿⇒入道殿 | 仰る |
せ | 尊敬の助動詞「す」連用形 | 尊敬語 | 助動詞 | 大納言殿⇒入道殿 | ~なさる |
し | 過去の助動詞「き」連体形 | ||||
に | 格助詞 | ||||
なむ、 | 係助詞(係り結び) | ||||
われながら | 副詞 | ||||
心おごりせ | サ行変格活用動詞「心おごりす」未然形 | ||||
られ | 自発の助動詞「らる」連用形 | ||||
し」 | 過去の助動詞「き」連体形(「なむ」結び) | ||||
と | 格助詞 | ||||
のたまふ | 尊敬語ハ行四段活用動詞「のたまふ」終止形 | 尊敬語 | 本動詞 | 世継⇒大納言殿 | 仰る |
なる。 | 伝聞の助動詞「なり」連体形 | ||||
一事 | 名詞 | ||||
の | 格助詞 | ||||
すぐるる | ラ行下二段活用動詞「すぐる」連体形 | ||||
だに | 副助詞 | ||||
ある | ラ行変格活用動詞「あり」連体形 | ||||
に、 | 格助詞 | ||||
かく | 副詞 | ||||
いづれ | 名詞 | ||||
の | 格助詞 | ||||
道 | 名詞 | ||||
も | 係助詞 | ||||
ぬけ出で | ダ行下二段活用動詞「ぬけ出づ」連用形 | ||||
給ひ | ハ行四段活用動詞「たまふ」連用形 | 尊敬語 | 補助動詞 | 世継⇒大納言殿 | ~なさる |
けむ | 過去推量の助動詞「けむ」連体形 | ||||
は、 | 係助詞 | ||||
いにしへ | 名詞 | ||||
も | 係助詞 | ||||
侍ら | ラ行変格活用動詞「侍り」未然形 | 丁寧語 | 補助動詞 | 世継⇒読者 | ~です、ございます |
ぬ | 打消 の助動詞「ず」連体形 | ||||
こと | 名詞 | ||||
なり。 | 断定の助動詞「なり」終止形 |