名のあがらむこともまさりなまし。口をしかりけるわざかな。
訳
(公任卿が)御自分でもおっしゃったそうですが、
「漢詩の船に乗ればよかったなあ。
そうして、この和歌に匹敵するほどの(出来ばえのよい)漢詩を作ったとしたら、
名声ももっとあがっただろうに。
残念なことだったなあ。
御みづから | 名詞 | ||||
も | 係助詞 | ||||
のたまふ | ハ行四段活用動詞「のたまふ」終止形 | 尊敬語 | 本動詞 | 世継⇒大納言殿 | 仰る |
なる | 伝聞の助動詞「なり」連体形 | ||||
は、 | 係助詞 | ||||
「作文 | 名詞 | ||||
の | 格助詞 | ||||
に | 格助詞 | ||||
ぞ | 係助詞(係り結び) | ||||
乗る | ラ行四段活用動詞「乗る」終止形 | ||||
べかり | 当然の助動詞「べし」連用形 | ||||
ける。 | 詠嘆の助動詞「けり」連体形(「ぞ」結び) | ||||
さて | 副詞 | ||||
かばかり | 副詞 | ||||
の | 格助詞 | ||||
詩(からうた) | 名詞 | ||||
を | 格助詞 | ||||
作り | ラ行四段活用動詞「作る」連用形 | ||||
たら | 完了の助動詞「たり」未然形 | ||||
ましか | 反実仮想の助動詞「ましか」已然形 | ||||
ば、 | 接続助詞 | ||||
名 | 名詞 | ||||
の | 格助詞 | ||||
あがら | ラ行四段活用動詞「あがる」未然形 | ||||
む | 仮定婉曲の助動詞「む」連体形 | ||||
こと | 名詞 | ||||
も | 係助詞 | ||||
まさり | ラ行四段活用動詞「まさる」連用形 | ||||
な | 強意の助動詞「ぬ」未然形 | ||||
まし。 | 反実仮想の助動詞「まし」終止形 | ||||
口をしかり | シク活用形容詞「口をし」連用形 | ||||
ける | 詠嘆の助動詞「けり」連体形 | ||||
わざ | 名詞 | ||||
かな。 | 終助詞 |
さても殿の、『いづれにとか思ふ』とののたまはせしになむ、
われながら心おごりせられし」とのたまふなる。