世継、「しかしか、さ侍りしことなり。
さても、主の御名はいかにぞや」といふめれば、
現代語訳
世継は、「さようさよう、そのとおりでした。
ところで、あなたのお名まえは、何と申されますか。」と言うと、
品詞分解
世継 | 名詞 | ||||
「しかしか、 | 感動詞 | ||||
さ | 副詞 | ||||
侍り | 丁寧の補助動詞ラ行変格活用動詞「侍り」連用形 | 丁寧語 | 補助動詞 | 大宅世継⇒夏山繁樹 | ~ます~です |
し | 過去の助動詞「き」連体形 | ||||
こと | 名詞 | ||||
なり。 | 断定の助動詞「なり」終止形 | ||||
さても、 | 接続詞 | ||||
主 | 名詞 | ||||
の | 格助詞 | ||||
御名 | 名詞 | ||||
は | 係助詞 | ||||
いかに | ナリ活用形容動詞「いかなり」連用形副詞 | ||||
ぞ | 係助詞終助詞 | ||||
や」 | 係助詞終助詞 | ||||
と | 格助詞 | ||||
いふ | ハ行四段活用動詞「いふ」終止形 | ||||
めれ | 推量の助動詞「めり」已然形 | ||||
ば、 | 接続助詞 |
語の解説
さ侍りし | そうでした。「さありし」の丁寧 |
いかにぞや | 「いかに」は副詞とする説と形容動詞「いかなり」の連用形の二つの説があります。この辺りは学校の先生の方針に従いましょうね! |
「故太政大臣殿にて元服つかまつりし時、
『きむぢが姓はなにぞ』と仰せられしかば、
『夏山となむ申す』と申ししを、
やがて繁樹となむつけさせ給へりし」
などいふに、いとあさましうなりぬ。
現代語訳
「(私が)故太政大臣のお邸で元服いたしました時、
(貞信公が)『おまえの姓は何というか。』とおっしゃいましたので、
『夏山と申します。』と申しましたところ
そのまま(夏山にちなんで)繁樹とお名づけになりました。」
などと言うので、(あまり古い話なものですから)
すっかり驚きあきれてしまいました。
品詞分解
「故太政大臣殿 | 名詞 | ||||
にて | 格助詞 | ||||
元服 | 名詞 | ||||
つかまつり | ラ行四段活用動詞「つかまつる」連用形 | 丁寧語 | 本動詞 | 夏山繁樹⇒大宅世継 | ~いたす~ます |
し | 過去の助動詞「き」連体形 | ||||
時、 | 名詞 | ||||
『きむぢ | 代名詞 | ||||
が | 格助詞 | ||||
姓 | 名詞 | ||||
は | 係助詞 | ||||
なに | 代名詞 | ||||
ぞ』 | 係助詞終助詞 | ||||
と | 格助詞 | ||||
仰せ | 尊敬語サ行下二段活用動詞「仰す」未然形 | 尊敬語 | 本動詞 | 夏山繁樹⇒貞信公=藤原忠平 | (言ふ)おっしゃる |
られ | 尊敬の助動詞「らる」連用形 | 尊敬語 | 助動詞「 | 夏山繁樹⇒貞信公=藤原忠平 | ~なさる |
しか | 過去の助動詞「き」已然形 | ||||
は、 | 接続助詞 | ||||
『夏山 | 名詞 | ||||
と | 格助詞 | ||||
なむ | 係助詞(係り結び) | ||||
申す』 | 丁寧語サ行四段活用動詞「申す」連体形(「なむ」結び) | 丁寧語 | 本動詞 | 夏山繁樹⇒貞信公ー藤原忠平 | (言ふ)言います申します |
と | 格助詞 | ||||
申し | 謙譲語サ行四段活用動詞「申す」連用形 | 謙譲語 | 本動詞 | 夏山繁樹⇒貞信公=藤原忠平 | 申し上げる |
し | 過去の助動詞「き」連体形 | ||||
を、 | 格助詞 | ||||
やがて | 副助詞 | ||||
繁樹 | 名詞 | ||||
と | 格助詞 | ||||
なむ | 係助詞(係り結び) | ||||
つけ | カ行下二段活用動詞「つく」未然形 | ||||
させ | 尊敬の助動詞「さす」連用形 | 尊敬語 | 助動詞 | 夏山繁樹⇒貞信公=藤原忠平 | ~なさる |
給へ | ハ行四段活用動詞「給ふ」已然形 | 尊敬語 | 補助動詞 | 夏山繁樹⇒貞信公=藤原忠平 | ~なさる |
り | 完了の助動詞「り」連用形 | ||||
し」 | 過去の助動詞「き」連体形(「なむ」結び) | ||||
など | 副助詞 | ||||
いふ | ハ行四段活用動詞「いふ」連体形 | ||||
に、 | 接続助詞 | ||||
いと | 副詞 | ||||
あさましう | シク活用形容詞「あさまし」連用形「あさましく」ウ音便 | ||||
なり | ラ行四段活用動詞「なる」連用形 | ||||
ぬ。 | 完了の助動詞「ぬ」終止形 |
語の解説
元服 | 男子の成人式。11歳から15歳くらいまでに行う。髪を結い、冠をかぶり、大人の服を着る。※市長の長い話や騒ぐヤンキーなどはいない。たぶん同窓会もない。 |
つかまつり | 「つかまつる」は「す・なす・つくる」などの謙譲語。「~いたす」 |
きむぢ | きみ。なんじ。おまえ。対称の代名詞。二人称の代名詞。※きむぢ、テストで死に給うことなかれ。 |
夏山となむ申す | 「夏山」は自分のことなので、この「申す」は「言う」丁寧語。「なむ~申す」で係り結んどいてくださいね |
やがて | そのまま。姓が夏山なので、その関係で、そのまま繁樹とつけたということ。夏山は5月生まれにちなんだ姓。※冬山だったら、枯れ木という名前だったかもしれませんね。 |
繁樹 | 夏山繁樹。世継の話し相手をして、時折自分の見聞や意見を語る。 |
あさましう | 「あさましく」のウ音便。「あさまし」はあまりに意外でおどろきあきれる」。プラス、マイナス両方の意味で使います。ここでは、「古っ!」ということで驚きあきれてます。 |