大鏡雲林院の菩提講品詞分解全訳序ノ一序ノ七

新編日本古典文学全集 (34) 大鏡

要旨
雲林院の菩提講

(=読経ライブ、みんなで『法華経』読んで天国に行っちゃおうぜという会)に参会した人の中に、

二人の老人と一人の老女が来合わせた。

大宅世継・夏山繁樹・繁樹の後添いの女の三人である。

今回の話で出てくる、二人の老人(登場人物は+作者)はきょうの出会いを喜び、

多年見聞してきたことをここで語り合いたいという。

「ただ今の入道殿下の御有様をも申し合はせばや」

=いまブイブイ言わせている道長さまのことを語ろうぜ!

というところに、

「大鏡」を書いた目的が書かれてます。

また、一部序ノ七の部分も載せておきます。

ここにも『大鏡』の目的が書かれてます。

 

さいつ頃、雲林院の菩提講に詣でて侍りしかば、

例人よりはこよなう年老い、うたてげなる翁ふたり媼といきあひて

同じところにゐぬめり。

 

現代語訳

先ごろ、(わたくし=作者が)、

雲林院の菩提講に参詣いたしましたところ、

普通の人に比べて格別に年をとって、

異様な感じのする爺さん二人と婆さん(一人)とが来会わせて、

同じ場所にすわっていました。

 

品詞分解

さいつ頃、 名詞
雲林院 名詞
の 格助詞
菩提講 名詞
に 格助詞
詣で ダ行下二段活用動詞「詣づ」連用形 謙譲語 本動詞 作者⇒雲林院の菩提講 参詣する
て 接続助詞
侍り 丁寧の補助動詞「侍り」連用形 丁寧語 補助動詞 作者⇒読者  ~ます
しか 過去の助動詞「き」已然形
ば、 接続助詞
例人 名詞
より 格助詞
は 係助詞
こよなう ク活用形容詞「こよなし」連用形「こよなく」ウ音便
年 名詞
老い、 ヤ行上二段活用動詞「老ゆ」連用形
うたてげなる ナリ活用形容動詞「うたてげなり」連体形
翁 名詞
ふたり 名詞
媼 名詞
と 格助詞
いきあひ ハ行四段活用動詞「いきあふ」連用形
て 接続助詞
同じ シク活用形容詞「同じ」連体形
所 名詞
に 格助詞
ゐ ワ行上一段活用動詞「ゐる」連用形
ぬ 強意の助動詞「ぬ」終止形
めり。 婉曲の助動詞「む」終止形

語の解説

さいつ頃  「さき(先)つ頃」のイ音便。「つ」は連体格で「の」の意。後一条天畠の万寿二年(1025年)の五月と思われる。
雲林院 京都市北区紫野にあった天台宗の寺。観音堂が現存する。「うんりんゐん」の「ん」を省いた読み方。「うりゐん・うりゐ」となっている場合もある。
菩提講 極楽往生を求める人のために『法華経』を説教する法会。「菩提」は梵悟Bodhiの音訳。極楽往生・成仏の意の雲林院の菩提講は五月に行なわれた。
詣でて侍りしかば 「詣づ」は参詣するの謙譲語「詣でたり⇒詣でてあり⇒詣でて侍り」で丁寧体になっている。「しかば」は已然形+ばで「~したところ」
例人 普通の人、一般の人。「例の人」になっている本もある。
こよなう 「こよなく」のウ音便。この上なく。格別に
うたてげなる 異様な。怪しげな。信じられないほど年を取った老人だからである。
媼 老女。「おうな・おむな」は「老女」「をうな。をむな」は「女」区別しよう!!
同じ 形は終止形だが、連体形「同じき」と同じように用いられる。上の表では連体形にしましたが、ここは学校の先生に聞いておこう!
ゐぬめり 「ゐ=ゐる」は「すわる」「ぬ」は強意・確述「めり」は婉曲。訳さなくてOK!