このをば、いといたう老いて、二重にて居たり。
これを、なほ、この嫁、所狭がりて、
今まで死なぬことと思ひてよからぬことを言ひつつ、
「持ていまして、深き山に捨てたうびてよ。」とのみ責めければ、
責められわびて、さしてむと思ひなりぬ。
こ | 代名詞 |
の | 格助詞 |
をば、 | 名詞 |
いと | 副詞 |
いたう | ク活用形容詞「いたし」連用形「いたく」ウ音便 |
老い | ヤ行上二段活用動詞「老ゆ」連用形 |
て、 | 接続助詞、 |
二重 | 名詞 |
に | 断定の助動詞「なり」連用形 |
て | 接続助詞 |
居 | ワ行上一段活用動詞「居る」連用形 |
たり。 | 存続の助動詞「たり」終止形 |
これ | 代名詞 |
を、 | 格助詞、 |
なほ、 | 副詞 |
こ | 代名詞 |
の | 格助詞 |
嫁、 | 名詞 |
所狭がり | ラ行四段活用動詞「所狭がる」連用形 |
て、 | 接続助詞、 |
今 | 名詞 |
まで | 副詞 |
死な | ナ行変格活用「死ぬ」未然形 |
ぬ | 打消の助動詞「ず」連体形 |
こと | 名詞 |
と | 格助詞 |
思ひ | ハ行四段活用動詞「思ふ」連用形 |
て | 接続助詞 |
よから | ク活用形容詞「よし」未然形 |
ぬ | 打消の助動詞「ず」連体形 |
こと | 名詞 |
を | 格助詞 |
言ひ | ハ行四段活用動詞「いふ」連用形 |
つつ、 | 接続助詞 |
「持ていまし | サ行四段活用動詞「持ています」連用形 |
て、 | 接続助詞、 |
深き | ク活用形容詞「深く」連体形 |
山 | 名詞 |
に | 格助詞 |
捨て | タ行下二段活用動詞「捨つ」連用形 |
たうび | 尊敬語補助動詞バ行四段活用動詞「たうぶ」連用形 |
てよ。」 | 完了の助動詞「つ」命令形 |
と | 格助詞 |
のみ | 副助詞 |
責め | マ行下二段活用動詞「責む」連用形 |
けれ | 過去の助動詞「けり」已然形 |
ば、 | 接続助詞、 |
責め | マ行下二段活用動詞「責む」未然形 |
られ | 受け身の助動詞「らる」連用形 |
わび | バ行上二段活用「わぶ」連用形 |
て、 | 接続助詞、 |
さ | 副詞 |
し | サ行変格活用動詞「す」連用形 |
て | 接続助詞 |
む | 意志の助動詞「む」終止形 |
と | 格助詞 |
思ひなり | ラ行用四段活用動詞「思ひなる」連用形 |
ぬ。 | 完了の助動詞「ぬ」終止形 |
月のいと明かき夜、「媼ども、いざたまへ。寺に尊きわざすなる、