
目次
一ヶ月で63点あげてセンター英語で194点&52点上げてセンター世界史で94点達成させて、 たとえ学校の先生からお前なんかMARCHにも受からないと言われても、 残り4ヶ月で上智大学合格に導いたオンライン家庭教師『逆転合格メーカー』のコシャリです。 いつも独学受験.jpにお越しいただきましてありがとうございます。
助動詞:薄緑のマーカーです
敬語:緑のマーカーです
係り結び:オレンジのマーカーです。
音便:水色マーカーです

花山天皇の出家の要約
登場人物:世継(昔のことを語っています)
花山天皇:(粟田殿=藤原道兼にはめられて出家することを余儀なくされた)
粟田殿:花山天皇をはめて退位させた
(世継が語っています)
次の帝、花山院の天皇と申しき。冷泉院の第一の皇子なり。
御母、贈皇后宮懐子と申す。
現代語訳
つぎの天皇は花山天皇と申しあげました。
冷泉院の第一皇子であります。
(花山天皇の)御母は、贈皇后宮懐子と申しあげます。
品詞分解
次 | 名詞 |
の | 格助詞 |
帝 | 名詞 |
花山天皇 | 名詞 |
と | 格助詞 |
申し | 謙譲語
本動詞 サ行四段活用動詞「申す」連用形 世継⇒花山天皇 申し上げる |
き。 | 過去の助動詞「き」終止形 接続は連用形(カ変・サ変は特別) せ/◯/き/し/しか/◯ |
冷泉院 | 名詞 |
の | 格助詞 |
第一 | 名詞 |
の | 格助詞 |
皇子 | 名詞 |
なり。 | 断定の助動詞「なり」終止形 接続は体言連体形など なら/なり・に/なり/なる/なれ/なれ |
御母、 | 名詞 |
贈皇后宮懐子 | 名詞
「贈」は死後に贈られた官位の上につける名前 |
と | 格助詞 |
申す。 | 謙譲語
本動詞 サ行四段活用動詞「申す」終止形 世継⇒贈皇后宮懐子 申し上げる |
この部分は教科書によってはないかもしれません。
太政大臣伊尹のおとどの第一の御女なり。
この帝、安和元年戊辰十月二十六日丙子、
母方の御祖父の一条の家にて生まれさせ給ふとあるは、世尊時のことにや。
その日は、冷泉院の御時の大嘗会の御禊あり。
同二年八月十三日、春宮に立ち給ふ。御年二歳。
天元五年二月十九日、御元服、御年十五。
現代語訳
(贈皇后宮懐子は)太政大臣伊尹公の御長女です。
この天皇(=花山天皇)が安和元年戊辰十月二十六日丙子の日に、
母方(贈皇后宮懐子)の御祖父〔=伊尹公〕の、一条の邸宅でお生れになられた
とあるのは、
(今の)世尊寺のでことでありましょうか。
花山天皇の御誕生の日には、
(花山天皇の御父君である)冷泉天皇の御代の大嘗会の御禊がありました。
同二年(=安和二年)八月十三日に、春宮にお立ちになりました。
(その時の花山天皇は)御年二歳(でした)。天元五年二月十九日に御元服され、御年十五歳でした。
品詞分解
太政大臣伊尹=これまさ | 名詞 |
の | 格助詞 |
おとど | 名詞 |
の | 格助詞 |
第一 | 名詞 |
の | 格助詞 |
御女 | 名詞
世継⇒贈皇后宮懐子 |
なり。 | 断定の助動詞「なり」終止形 |
こ | 代名詞 |
の | 格助詞 |
帝、 | 名詞 |
安和元年戊辰十月二十六日丙子、 | 名詞 |
母方 | 名詞 |
の | 格助詞 |
御祖父=おおじ | 名詞 |
の | 格助詞 |
一条 | 名詞 |
の | 格助詞 |
家 | 名詞 |
にて | 格助詞 |
生まれ | ラ行下二段活用動詞「生まる」未然形 |
させ | 尊敬の助動詞「さす」連用形 世継⇒花山天皇への敬意 接続は未然形 させ/させ/さす/さする/さすれ/させよ |
給ふ | 尊敬語
補助動詞 ハ行四段活用動詞「給ふ」終止形 世継⇒花山天皇 なさる |
と | 格助詞 |
ある | ラ行変格活用動詞「あり」連体形 |
は、 | 係助詞 |
世尊時 | 名詞 |
の | 格助詞 |
こと | 名詞 |
に | 断定の助動詞「なり」連用形 接続は体言連体形など なら/なり・に/なり/なる/なれ/なれ |
や。 | 係助詞(係り結びは省略) |
そ | 代名詞 |
の | 格助詞 |
日 | 名詞 |
は、 | 係助詞 |
冷泉院 | 名詞 |
の | 格助詞 |
御時 | 名詞 |
の | 格助詞 |
大嘗会 | 名詞 |
の | 格助詞 |
御禊 | 名詞 |
あり。 | ラ行変格活用動詞「あり」終止形 |
同二年八月十三日、 | 名詞 |
春宮 | 名詞 |
に | 格助詞 |
立ち | タ行四段活用動詞「立つ」連用形 |
給ふ。 | 尊敬語
補助動詞 ハ行四段活用動詞「給ふ」終止形 世継⇒花山天皇 なさる |
御年二歳。 | 名詞 |
天元五年二月十九日、 | 名詞 |
御元服、 | 名詞 |
御年十五。 | 名詞 |
永観二年八月二八日、位につかせ給ふ、御年十七。
寛和二年丙戌(ひのえいぬ)六月二十二日の夜、あさましく候ひしことは、
人にも知らせ給はで、みそかに花山寺におはしまして、
御出家人道せさせ/給へ/り/し/こそ、御年十九。
世を保たせ給ふこと二年。そののち、二十二年おはしましき。
現代語訳
永観二年八月二十八日に、(花山天皇は)御即位なさいました。
(その時の花山天皇は)御年十七歳(でした)。
寛和二年丙戌六月二十二日の夜に、
(私世継が)驚きあきれれてしまいましたことは、(花山天皇が)だれにもお知らせにならないで、
ひそかに花山寺にいらっしゃって御出家入道なさったことで、
(ご出家入道された時は、まだ花山天皇の)御年は、十九歳でした。
(花山天皇が)世をお治めなさること二年。
御出家なさってから、二十二年御存命でいらせられました。
品詞分解
永観二年八月二十八日、 | 名詞 |
位 | 名詞 |
に | 格助詞 |
つか | カ行四段活用動詞「つく」未然形 |
せ | 尊敬の助動詞「す」連用形
接続は四段・ナ変・ラ変の未然形 世継⇒花山天皇 |
給ふ。 | 尊敬語
補助動詞 ハ行四段活用動詞「給ふ」終止形 世継⇒花山天皇 なさる |
御年十七。 | 名詞 |
寛和二年丙戌六月二十二日 | 名詞 |
の | 格助詞 |
夜、 | 名詞 |
あさましく | シク活用形容詞「あさまし」連用形 |
さぶらひ | 丁寧語
補助動詞 ハ行四段活用動詞「さぶらふ」連用形 世継⇒聞き手 ございます |
し | 過去の助動詞「き」連体形 接続は連用形(カ変・サ変は特別) せ/◯/き/し/しか/◯ |
こと | 名詞 |
は、 | 係助詞 |
人 | 名詞 |
に | 格助詞 |
も | 係助詞 |
知ら | ラ行四段活用動詞「知る」未然形 |
せ | 使役の助動詞「す」未然形
接続は四段・ナ変・ラ変の未然形 |
させ | 尊敬の助動詞「さす」連用形 世継⇒花山天皇への敬意 接続は未然形 させ/させ/さす/さする/さすれ/させよ |
給は | 尊敬語
補助動詞 ハ行四段活用動詞「給ふ」未然形 世継⇒花山天皇 なさる |
で、 | 接続助詞 |
みそかに | ナリ活用形容動詞「みそかなり」連用形 |
花山寺 | 名詞 |
に | 格助詞 |
おはしまし | 尊敬語
本動詞 サ行四段活用動詞「おはします」連用形 世継⇒花山天皇 いらっしゃる |
て、 | 接続助詞 |
御出家入道 | 名詞 |
せ | サ行変格活用動詞「す」未然形 |
させ | 尊敬の助動詞「さす」連用形 世継⇒花山天皇への敬意 接続は未然形 させ/させ/さす/さする/さすれ/させよ |
給へ | 尊敬語
補助動詞 ハ行四段活用動詞「給ふ」已然形 世継⇒花山天皇 なさる |
り | 完了の助動詞「り」連用形 接続はサ変の未然形・四段の已然形 ら/り/り/る/れ/れ |
し | 過去の助動詞「き」連体形 接続は連用形(カ変・サ変は特別) せ/◯/き/し/しか/◯ |
こそ。 | 係助詞(係り結びは省略) |
御年十九。 | 名詞 |
世 | 名詞 |
を | 格助詞 |
保た | タ行四段活用動詞「保つ」未然形 |
せ | 尊敬の助動詞「す」連用形 世継⇒花山天皇への敬意 接続は四段・ナ変・ラ変の未然形 せ/せ/す/する/すれ/せよ |
給ふ | 尊敬語
補助動詞 ハ行四段活用動詞「給ふ」連体形 世継⇒花山天皇 なさる |
こと、 | 名詞 |
二年。 | 名詞 |
そ | 代名詞 |
の | 格助詞 |
後二十二年 | 名詞 |
おはしまし | 尊敬語
本動詞 サ行四段活用動詞「おはします」連用形 世継⇒花山天皇 いらっしゃる |
き。 | 過去の助動詞「き」終止形 接続は連用形(カ変・サ変は特別) せ/◯/き/し/しか/◯ |
あはれなることは、下りおはしましける夜は、藤壺の上の御局の小戸より
出でさせ給ひけるに、有明の月のいみじく明かかりければ、
「顕証にこそありけれ。いかがすべから/む。」と仰せられ/けるを、
「さりとて、とまらせ給ふべきやう侍らず。
神璽・宝剣わたり給ひぬるには。」と、
粟田殿のさわがし申し/給ひけるは、
まだ帝出でさせおはしまさざり/ける先に、手づから取りて、
春宮の御方にわたし奉り/給ひてければ、帰り入らせ給はむことは、
あるまじくおぼして、しか申させ給ひけるとぞ。
現代語訳
(世継が)しみじみとご同情にたえないことは、
(花山天皇が)御退位なさった夜(のことです。その夜、花山天皇)は、
藤壺の上の御局の小戸からお出ましになりましたところ、
有明の月がたいそう明るかったので、
(花山天皇が)「(これ=これほどの明るさの月明かりでは自分が)あまり目立ちすぎる。
どうしたものだろう。」とおっしやったところ、
(通兼公は)「だからといって、(ご出家を)御中止なされるわけのものではまいりますまい。
神璽と宝剣が(東宮=皇太子さまのお手許に)
おうつりになってしまいました以上は」
と粟田殿〔=道兼公〕がおせきたて申しあげなさったのは、
(そのわけは、)まだ帝が(清涼殿から外へ)
お出ましにならなかったその前に、
粟田殿御自身で直接(神璽・宝剣を)持って
東宮の御方に(神璽・宝剣を)お渡し申しあげなさってしまわれたので、
(再び帝が)宮中にお戻りになるようなことがあってはならないことだ
と(粟田殿=道兼公が)お思いになって、こう申しあげなさったのだということです。
品詞分解
あはれなる | ナリ活用形容動詞「あはれなり」連体形 |
こと | 名詞 |
は、 | 係助詞 |
おり | ラ行上二段活用動詞「おる」連用形 |
おはしまし | 尊敬語
補助動詞 サ行四段活用動詞「おはします」連用形 世継⇒花山天皇への敬意 いらっしゃる |
ける | 過去の助動詞「けり」連体形 接続は連用形 けら/◯/けり/ける/けれ/◯ |
夜 | 名詞 |
は、 | 係助詞 |
藤壺 | 名詞 |
の | 格助詞 |
上 | 名詞 |
の | 格助詞 |
御局 | 名詞 |
の | 格助詞 |
小戸 | 名詞 |
より | 格助詞 |
出で | ダ行下二段活用動詞「「出づ」未然形 |
させ | 尊敬の助動詞「さす」連用形 世継⇒花山天皇への敬意 接続は未然形 させ/させ/さす/さする/さすれ/させよ |
給ひ | 尊敬語
補助動詞 ハ行四段活用動詞「給ふ」連用形 世継⇒花山天皇 なさる |
ける | 過去の助動詞「けり」連体形 接続は連用形 けら/◯/けり/ける/けれ/◯ |
に、 | 接続助詞 |
有明の月 | 名詞 |
の | 格助詞 |
いみじく | シク活用形容詞「いみじ」連用形 |
あかかり | ク活用形容詞「あかし」連用形 |
けれ | 過去の助動詞「けり」已然形
接続は連用形 |
ば、 | 接続助詞 |
「顕証に | ナリ活用形容動詞「顕証なり」連用形 |
こそ | 係助詞(係り結び) |
あり | 補助動詞ラ行変格活用動詞「あり」連用形 |
けれ。 | 詠嘆の助動詞「けり」已然形(「こそ」結び)
接続は連用形 |
いかが | 副詞(係り結び) |
す | サ行変格活用動詞「す」終止形 |
べから | 当然の助動詞「べし」未然形
接続は終止形、ラ変型は連体形 |
む」 | 推量の助動詞「む」連体形(「いかが」結び)
接続は未然形 |
と | 格助詞 |
仰せ | 尊敬語 本動詞
サ行下二段活用動詞「仰す」未然形 世継⇒花山天皇 おっしゃる |
られ | 尊敬の助動詞「らる」連用形
世継⇒花山天皇 接続は四段・ナ変・ラ変以外の未然形 |
ける | 過去の助動詞「けり」連体形 接続は連用形 けら/◯/けり/ける/けれ/◯ |
を、 | 接続助詞 |
「さりとて、 | 接続詞 |
とまら | ラ行四段活用動詞「とまる」未然形 |
せ | 尊敬の助動詞「す」連用形 粟田殿=道兼公⇒花山天皇への敬意 接続は四段・ナ変・ラ変の未然形 せ/せ/す/する/すれ/せよ |
給ふ | 尊敬語
補助動詞 ハ行四段活用動詞「給ふ」終止形 粟田殿(道兼)⇒花山天皇 なさる |
べき | 当然の助動詞「べし」連体形
接続は終止形、ラ変型は連体形 |
やう | 名詞 |
侍ら | 丁寧語
補助動詞 ラ行変格活用補助動詞「侍り」未然形 粟田殿=道兼公⇒花山天皇 ございます |
ず。 | 打消 の助動詞「ず」終止形
接続は未然形 |
神璽・宝剣 | 名詞 |
わたり | ラ行四段活用動詞「わたる」連用形 |
給ひ | 尊敬語
補助動詞 ハ行四段活用動詞「給ふ」連用形 粟田殿=道兼公⇒神璽・宝剣 なさる |
ぬる | 完了の助動詞「ぬ」連体形
接続は連用形 |
に | 格助詞 |
は」 | 係助詞 |
と、 | 格助詞 |
粟田殿 | 名詞 |
の | 格助詞 |
さはがし | サ行四段活用動詞「さはがす」連用形 |
申し | 謙譲語
補助動詞 サ行四段活用動詞「申す」連用形 世継⇒花山天皇への敬意 申し上げる |
給ひ | 尊敬語
補助動詞 ハ行四段活用動詞「給ふ」連用形 世継⇒粟田殿=道兼公への敬意 なさる |
ける | 過去の助動詞「けり」連体形 接続は連用形 けら/◯/けり/ける/けれ/◯ |
は、 | 係助詞 |
まだ | 副詞 |
帝 | 名詞 |
出で | ダ行下二段活用動詞「出づ」未然形 |
させ | 尊敬の助動詞「さす」連用形 世継⇒花山天皇への敬意 接続は未然形 させ/させ/さす/さする/さすれ/させよ |
おはしまさ | 尊敬語
補助動詞 サ行四段活用動詞「おはします」未然形 世継⇒花山天皇 いらっしゃる |
ける | 過去の助動詞「けり」連体形 接続は連用形 けら/◯/けり/ける/けれ/◯ |
さき | 名詞 |
に、 | 格助詞 |
手づから | 副詞 |
取り | ラ行四段活用動詞「とる」連用形 |
て、 | 接続助詞 |
春宮 | 名詞 |
の | 格助詞 |
御方 | 名詞 |
に | 格助詞 |
わたし | サ行四段活用動詞「わたす」連用形 |
奉り | 謙譲語
補助動詞 ラ行四段活用動詞「奉る」連用形 世継⇒東宮の御方への敬意 ~申し上げる |
給ひ | 尊敬語
補助動詞 ハ行四段活用動詞「給ふ」連用形 世継⇒粟田殿=道兼公への敬意 |
て | 完了の助動詞「つ」連用形
接続は連用形 |
けれ | 過去の助動詞「けり」已然形 接続は連用形 けら/◯/けり/ける/けれ/◯ |
ば、 | 接続助詞 |
帰り入ら | ラ行四段活用動詞「帰り入る」未然形 |
せ | 尊敬の助動詞「す」連用形
世継⇒花山天皇への敬意 |
給は | 尊敬語
補助動詞 ハ行四段活用動詞「給ふ」未然形 世継⇒花山天皇への敬意 なさる |
む | 仮定婉曲の助動詞「む」連体形
接続は未然形 |
こと | 名詞 |
は | 係助詞 |
ある | ラ行変格活用動詞「あり」連体形 |
まじく | 打消当然の助動詞「まじ」の連用形 接続は終止形、ラ変型には連体形 (まじく)・まじから/まじく・まじかり/まじ/まじき・まじかる/まじけれ/◯ |
おぼし | 尊敬語
本動詞 サ行四段活用動詞「おぼす」連用形 世継⇒粟田殿=道兼公への敬意 お思いになる |
て、 | 接続助詞 |
しか | 副詞 |
申さ | 謙譲語
本動詞 サ行四段活用動詞「申す」未然形 世継⇒花山天皇 申し上げる |
せ | 尊敬の助動詞「す」連用形
世継⇒粟田殿=道兼公への敬意 |
給ひ | 尊敬語
補助動詞 ハ行四段活用動詞「給ふ」連用形 世継⇒粟田殿=道兼公 なさる |
ける | 過去の助動詞「けり」連体形 接続は連用形 けら/◯/けり/ける/けれ/◯ |
と | 格助詞 |
ぞ。 | 係助詞(係り結びは省略されている) |
さやけき影を、まばゆくおぼしめしつるほどに、
月の顔にむら雲のかかりて、少し暗がりゆきければ、
「わが出家は成就するなり/けり。」
と仰せられて、歩み出でさせ給ふほどに、弘徽殿の女御の御文の、
ひごろ破り残して御身も放たず御覧じけるをおぼしめし出でて、
「しばし。」とて、取りに入りおはしましけるほどぞかし。
現代語訳
(花山天皇は)明るい月の光を気がひけるとお思いになっているうちに、
月の面にむら雲がかかって、
(花山天皇の周辺が)少し暗くなってきたので、
「自分の出家は遂げられるのだなあ。」
と(花山天皇が)おっしゃって、
(清涼殿の外に)歩き出しなさるときに、
(花山天皇は)(なくなられた)弘徽殿の女御のお手紙で、
平素お破り捨てにならず(とっておいて)、(いつも)御肌身離さず
(くり返し)御覧になっていたお手紙をお思い出しになって、
「ちょっと待て。」と(花山天皇は)おっしゃって、
(弘徽殿の女御の御文を清涼殿に)取りにおはいりになったときのことでしたよ。
品詞分解
さやけき | ク活用形容詞「さやけし」恋愛系 |
影 | 名詞 |
を | 格助詞 |
まばゆく | ク活用形容詞「まばゆし」連用形 |
おぼしめし | 尊敬語
本動詞 サ行四段活用動詞「おぼしめす」連用形 世継⇒花山天皇 |
つる | 完了の助動詞「つ」連体形
接続は連用形 |
ほど | 名詞 |
に、 | 格助詞 |
月 | 名詞 |
の | 格助詞 |
顔 | 名詞 |
に | 格助詞 |
むら雲 | 名詞 |
の | 格助詞 |
かかり | ラ行四段活用動詞「かかる」連用形 |
て、 | 接続助詞 |
少し | 副詞 |
暗がり行き | カ行四段活用動詞「「暗がり行く」連用形 |
けれ | 過去の助動詞「けり」已然形
接続は連用形 |
ば、 | 接続助詞 |
「わ | 代名詞 |
が | 格助詞 |
出家 | 名詞 |
は | 係助詞 |
成就する | サ行変格活用動詞「成就す」連体形 |
なり | 断定の助動詞「なり」連用形
接続は体言連体形など |
けり」 | 詠嘆の助動詞「けり」終止形
接続は連用形 |
と | 格助詞 |
おぼさ | 尊敬語
本動詞 サ行四段活用動詞「おぼす」未然形 世継⇒花山天皇 お思いになる |
れ | 尊敬の助動詞「る」連用形
世継⇒花山天皇 接続は四段・ナ変・ラ変の未然形 |
て | 接続助詞 |
歩み出で | ダ行下二段活用動詞「歩み出づ」未然形 |
させ | 尊敬の助動詞「さす」連用形 世継⇒花山天皇への敬意 接続は未然形 させ/させ/さす/さする/さすれ/させよ |
給ふ | 尊敬語
補助動詞 ハ行四段活用動詞「給ふ」連体形 世継⇒花山天皇 なさる |
ほど | 名詞 |
に、 | 格助詞 |
弘徽殿 | 名詞 |
の | 格助詞 |
御文 | 名詞 |
の | 格助詞(同格) |
日ごろ | 副詞 |
破り残し | サ行四段活用動詞「破り残す」連用形 |
て | 接続助詞 |
御身 | 名詞 |
も | 係助詞 |
え | 副詞 |
放た | タ行四段活用動詞「放つ」未然形 |
ず | 打消 の助動詞「ず」連用形
接続は未然形 |
御覧じ | 尊敬語
本動詞 サ行変格活用動詞「御覧ず」連用形 世継⇒花山天皇 ご覧になる |
ける | 過去の助動詞「けり」連体形
接続は連用形 |
を | 格助詞 |
おぼし出で | 尊敬語
本動詞 ダ行下二段活用動詞「おぼし出づ」連用形 世継⇒花山天皇 お思い出しになる 「思ひ出づ」の尊敬語 |
て、 | 接続助詞 |
「しばし」 | 副詞 |
とて、 | 格助詞 |
取り | ラ行四段活用動詞「取る」連用形 |
に | 格助詞 |
入ら | ラ行四段活用動詞「「入る」未然形 |
せ | 尊敬の助動詞「す」連用形
世継⇒花山天皇への敬意 |
おはしまし | 尊敬語
補助動詞 ハ行四段活用動詞「おはします」連用形 世継⇒花山天皇への敬意 いらっしゃる |
ける | 過去の助動詞「けり」連体形 接続は連用形 けら/◯/けり/ける/けれ/◯ |
ほど | 名詞 |
ぞ | 係助詞 |
かし。 | 終助詞 |
粟田殿の、「いかに、かくはおぼしめしならせおはしましぬるぞ。
ただ今過ぎば、おのづからさはりも出でまうで来な/む。」と、
そら泣きし給ひけるは。
現代語訳
(花山天皇が弘徽殿の女御の御手紙をとりに帰ろうとしたその時)
粟田殿〔=道兼公〕が
「どうしてそのような(思い切りの悪い)
お気持ちになられてしまったのですか。
今この機会を逃してしまったら、自然と支障も出てまいる
にちがいありません。」といって、うそ泣きをなさったことでしたよ。
粟田殿 | 名詞 |
の、 | 格助詞 |
「いかに | ナリ活用形容動詞「いかなり」連用形 |
おぼしめしなら | 尊敬語
本動詞 ラ行四段活用動詞「おぼしめしなる」未然形 粟田殿⇒花山天皇 |
せ | 尊敬の助動詞「す」連用形
粟田殿⇒花山天皇への敬意 |
おはしまし | 尊敬語
補助動詞 ハ行四段活用動詞「おはします」連用形 粟田殿⇒花山天皇 いらっしゃる |
ぬる | 完了の助動詞「ぬ」連体形
接続は連用形 |
ぞ。 | 終助詞
(係助詞の終助詞的用法) 学校の先生に従おう |
ただ今 | 名詞 |
過ぎ | ガ行上二段活用動詞「過ぐ」未然形 |
ば、 | 接続助詞 |
おのづから | 副詞 |
さはり | 名詞 |
も | 係助詞 |
出でまうで来(き) | 謙譲語
本動詞 カ行変格活用動詞「出でまうで来(く)」連用形 粟田殿⇒花山天皇への敬意 「出で来(く)」の謙譲語 出てまいる |
な | 強意の助動詞「ぬ」未然形
接続は連用形 |
む」 | 推量の助動詞「む」終止形
接続は未然形 |
と、 | 格助詞 |
そら泣きし | サ行変格活用動詞「そら泣きす」連用形 |
給ひ | 尊敬語
補助動詞 ハ行四段活用動詞「給ふ」連用形 世継⇒粟田殿=道兼公 |
ける | 過去の助動詞「けり」連体形
接続は連用形 |
は。 | 終助詞(詠嘆)
(係助詞の終助詞的用法詠嘆) 学校の先生に従おう |
花山寺におはしまし着きて、御髪下ろさせ給ひてのちにぞ、
粟田殿は、「まかり出でて、大臣にも、変はらぬ姿、いま一度見え、
かくと案内申して、必ず参り/侍らむ。」と申し/給ひければ、
「我をば、はかるなり/けり。」とてこそ、泣かせ給ひけれ。
あはれに悲しきことなりな。
日ごろ、よく御弟子にて候はむと契りて、すかし申し/給ひけむが恐ろしさよ。
現代語訳は次のページに続きます