本動詞
サ行四段活用動詞「おぼす」連用形
世継⇒粟田殿=道兼公への敬意
お思いになる
本動詞
サ行四段活用動詞「申す」未然形
世継⇒花山天皇
申し上げる
世継⇒粟田殿=道兼公への敬意
接続は四段・ナ変・ラ変の未然形
せ/せ/す/する/すれ/せよ
補助動詞
ハ行四段活用動詞「給ふ」連用形
世継⇒粟田殿=道兼公
なさる
接続は連用形
けら/◯/けり/ける/けれ/◯
さやけき影を、まばゆくおぼしめしつるほどに、
月の顔にむら雲のかかりて、少し暗がりゆきければ、
「わが出家は成就するなり/けり。」
と仰せられて、歩み出でさせ給ふほどに、弘徽殿の女御の御文の、
ひごろ破り残して御身も放たず御覧じけるをおぼしめし出でて、
「しばし。」とて、取りに入りおはしましけるほどぞかし。
現代語訳
(花山天皇は)明るい月の光を気がひけるとお思いになっているうちに、
月の面にむら雲がかかって、
(花山天皇の周辺が)少し暗くなってきたので、
「自分の出家は遂げられるのだなあ。」
と(花山天皇が)おっしゃって、
(清涼殿の外に)歩き出しなさるときに、
(花山天皇は)(なくなられた)弘徽殿の女御のお手紙で、
平素お破り捨てにならず(とっておいて)、(いつも)御肌身離さず
(くり返し)御覧になっていたお手紙をお思い出しになって、
「ちょっと待て。」と(花山天皇は)おっしゃって、
(弘徽殿の女御の御文を清涼殿に)取りにおはいりになったときのことでしたよ。