道兼は仁寿殿の塗籠、道長は大極殿へ行け。」と仰せられければ、
現代語訳
そのようなことを面白がるところのある花山帝であるから、
(花山帝は)「それ(=この雨の降る夜に人気のない遠くはなれている場所に一人でいくようなこと)はたいそう面白いことだ。それ(一人で行ける)ならば行け。道隆は豊楽院、道兼は仁寿殿の塗籠、道長は大極殿へ行け。」と仰っられたので、
品詞分解
さる | 連体詞 |
ところ | 名詞 |
おはします | 尊敬語補助動詞「おはします」連用形 |
帝 | 名詞 |
に | 断定の助動詞「なり」連用形 |
て | 接続助詞 |
「いと | 「副詞 |
興 | 名詞 |
ある | ラ行変格活用動詞「あり」連体形 |
こと | 名詞 |
なり。 | 断定の助動詞「なり」終止形 |
さらば | 接尾語 |
行け | カ行四段活用動詞「行く」命令形 |
道隆 | 名詞 |
は | 係助詞 |
豊楽院 | 名詞 |
道兼 | 名詞 |
は | 係助詞 |
仁寿殿 | 名詞 |
の | 格助詞 |
塗籠 | 名詞 |
道長 | 名詞 |
は | 係助詞 |
大極殿 | 名詞 |
へ | 格助詞 |
行け。」 | カ行四段活用動詞「行く」命令形 |
と | 格助詞 |
仰せ | 尊敬語本動詞サ行下二段活用動詞「仰す」未然形 |
られ | 尊敬の助動詞「らる」連用形 |
けれ | 過去の助動詞「けり」已然形 |
ば | 接続助詞 |
よその君達は、便なきことをも奏してけるかなと思ふ。
また、奉らせ給へる殿ばらは、御けしき変はりて、
益なしとおぼしたるに、
現代語訳
そばにいた他の方々は(道長公が)つまらぬことを奏上したものだとお思いになる。
一方で、帝のご命令をお受け申された殿たち(道隆公、道兼公)は、お顔色が変わって、「困ったことだ」とお思いになられておりますのに、
品詞分解
よそ | 名詞 |
の | 格助詞 |
君達 | 名詞 |
は | 係助詞 |
便なき | ク活用形容詞「便なし」連体形 |
こと | 名詞 |
を | 格助詞 |
も | 係助詞 |
奏し | 謙譲語本動詞サ行変格活用動詞「奏す」連用形 |
て | 完了の助動詞「つ」連用形 |
ける | 詠嘆の助動詞「けり」連体形 |
かな | 終助詞 |
と | 格助詞 |
思ふ。 | ハ行四段活用動詞「思ふ」終止形 |
また | 接尾語 |
承ら | 謙譲語本動詞ラ行四段活用動詞「承る」未然形 |
せ | 尊敬の助動詞「す」連用形 |
給へ | 尊敬語補助動詞ハ行四段活用動詞「給ふ」已然形 |
る | 完了の助動詞「り」連体形 |
殿ばら | 名詞 |
は | 係助詞 |
御けしき | 接頭語+名詞 |
変はり | ラ行四段活用動詞「変はる」 |
て | 接続助詞 |
益なし | ク活用形容詞「益なし」終助詞 |
と | 格助詞 |
おぼし | 尊敬語本動詞サ行四段活用動詞「おぼす」連用形 |
たる | 完了の助動詞「たり」連体形 |
に | 接続助詞 |
入道殿は、つゆさる御気色もなくて、
「私の従者をば具し候はじ。この陣の吉上まれ、滝口まれ、一人を