『昭慶門まで遅れ。』と仰せ言給べ。それより内には、一人入り侍らむ。」
と申し給へば、
現代語訳
(道長公は)「自分の従者は連れて行きますまい。
この近衛の陣の下役人でも、あるいは滝口の武士でも、だれか一人に『(道長を)昭慶門まで送れ。』とご命令くださいませ。
それ(=昭慶門)より内部には私一人が入りましょう。」と(道長公が花山帝に)申し上げなさると、
品詞分解
入道殿 | 名詞 |
は | 係助詞 |
つゆ | 副詞 |
さる | 連体詞 |
御気色 | 接頭語+名詞 |
も | 係助詞 |
なく | ク活用形容詞「なし」連用形 |
て | 接続助詞 |
「私 | 名詞 |
の | 格助詞 |
従者 | 名詞 |
を | 格助詞 |
ば | 接続助詞 |
具し | サ行変格活用動詞「具す」連用形 |
候は | 丁寧語補助動詞ハ行四段活用動詞「候ふ」未然形 |
じ。 | 打消推量の助動詞「じ」終止形 |
こ | 代名詞 |
の | 格助詞 |
陣 | 名詞 |
の | 格助詞 |
吉上 | 名詞 |
まれ | 連語断定の助動詞「なり」連用形「(に)もあれーーにもあれ」で「AでもよいしBでもよい」 |
滝口 | 名詞 |
まれ | 連語断定の助動詞「なり」連用形「(に)もあれーーにもあれ」で「AでもよいしBでもよい」 |
一人 | 名詞 |
を | 格助詞 |
『昭慶門 | 名詞 |
まで | 副助詞 |
送れ。』 | ラ行四段活用動詞「送る」命令形 |
と | 格助詞 |
仰せ言 | 名詞 |
給べ。 | 尊敬語本動詞バ行四段活用動詞「給ぶ」命令形 |
それ | 代名詞 |
より | 格助詞 |
内 | 名詞 |
に | 格助詞 |
は | 係助詞 |
一人 | 名詞 |
入り | ラ行四段活用動詞「入る」連用形 |
侍ら | 丁寧語補助動詞ラ行変格活用動詞「侍り」未然形 |
む。」 | 意志の助動詞「む」終止形 |
と | 格助詞 |
申し | 謙譲語本動詞サ行四段活用動詞「申す」連用形 |
給へ | 尊敬語補助動詞ハ行四段活用動詞「給ふ」已然形 |
ば | 接続助詞 |
「証なきこと。」と仰せらるるに、「げに。」とて、御手箱に
置かせ給へる小刀まして立ち給ひぬ。