「二千里外故人心」と誦じ給へる、例の涙もとどめられず。
現代語訳
「二千里外故人心」と声を出して
お読みになっているのは、いつものように人々は
涙をとどめることが出来ない。
品詞分解
「二千里外故人心」 | 名詞 |
と | 格助詞 |
誦じ | サ行四段活用動詞「誦ず」連用形 |
給へ | ハ行四段活用動詞「給ふ」已然形
尊敬語補助動詞 筆者⇒源氏 |
る、 | 完了の助動詞「り」連体形
接続はサ変の未然形・四段の已然形 |
例 | 名詞 |
の | 格助詞 |
涙 | 名詞 |
も | 係助詞 |
とどめ | マ行下二段活用動詞「とどむ」未然形 |
られ | 可能の助動詞「らる」未然形
接続は四段・ナ変・ラ変以外の未然形 可能はたいてい打消セット! |
ず。 | 打消の助動詞「ず」終止形
接続は未然形 |
入道の宮の、「霧やへだつる」とのたまはせしほど
いはむ方なく恋しく、
をりをりのこと思ひ出で給ふに、よよと泣かれ給ふ。
現代語訳
入道の宮が「霧や
へだつる」とおっしやった時のことが言いようもなく恋しく、
折々の幸をお思い出しになると、
よよと思わず泣かれなさる。
品詞分解
入道の宮 | 名詞 |
の、 | 格助詞 |
「霧 | 名詞 |
や | 係助詞(係り結び) |
へだつる」 | タ行下二段活用動詞「へだつ」連体形(「や」の結び) |
と | 格助詞 |
のたまはせ | サ行下二段活用動詞「のたまはす」連用形
尊敬語本動詞 筆者⇒入道の宮 |
し | 過去の助動詞「き」連体形
接続は連用形(カ変・サ変は特別) |
ほど | 名詞 |
いは | ハ行四段活用動詞「いふ」未然形 |
む | 推量の助動詞「む」連体形 |
方 | 名詞 |
なく | ク活用形容詞「なし」連用形 |
恋しく、 | シク活用形容詞「恋し」連用形 |
をりをり | 名詞 |
の | 格助詞 |
こと | 名詞 |
思ひ出で | ダ行下二段活用動詞「思ひ出づ」連用形 |
給ふ | ハ行四段活用動詞「給ふ」連体形
尊敬語補助動詞 筆者⇒源氏 |
に、 | 接続助詞 |
よよと | 副詞 |
泣か | カ行四段活用動詞「泣く」未然形 |
れ | 自発の助動詞「る」連用形
接続は四段・ナ変・ラ変の未然形 |
給ふ。 | ハ行四段活用動詞「給ふ」終止形
尊敬語補助動詞 筆者⇒源氏 |
(供人)「夜ふけはべりぬ」と聞こゆれど、なほ入り給はず。
現代語訳
供人「夜がふけてしまいます」と申し上げるけれど、
やはり奥にお入りにならない。
品詞分解
夜 | 名詞 |
ふけ | カ行下二段活用動詞「ふく」連用形 |
はべり | ラ行変格活用動詞「侍り」連用形
丁寧語補助動詞 (供人)⇒源氏 |
ぬ」 | 完了の助動詞「ぬ」終止形
接続は連用形 |
と | 格助詞 |
聞こゆれ | ヤ行下二段活用動詞「聞こゆ」已然形
謙譲語 筆者⇒源氏 |
ど、 | 接続助詞 |
なほ | 副詞 |
入り | ハ行四段活用動詞「入る」連用形 |
給は | ハ行四段活用動詞「給ふ」未然形
尊敬語補助動詞 筆者⇒源氏 |
ず。 | 打消の助動詞「ず」終止形
接続は未然形 |
源氏
見るほどぞしばしなぐさむめぐりあはむ月の都ははるかなれども
現代語訳
源氏 月を見ている間しばらく心が慰むこと
だ。恋しい人にめぐり逢うかもしれない月の
都は遥か遠くであるけれども。
品詞分解
見る | ラ行上一段活用動詞「見る」連体形 |
もど | 名詞 |
ぞ | 係助詞(係り結び) |
しばし | 副詞 |
なぐさむ | マ行四段活用動詞「なぐさむ」連体形(「ぞ」結び) |
めぐりあは | ハ行四段活用動詞「めぐりあふ」未然形 |
む | 推量の助動詞「む」連体形
接続は未然形 |
月 | 名詞 |
の | 格助詞 |
都 | 名詞 |
は | 係助詞 |
はるかなれ | ナリ活用形容動詞「はるかなり」已然形 |
ども | 接続助詞 |