須磨6白き綾のなよよかなる、紫苑色など奉りて、

こまやかなる御直衣、帯しどけなくうち乱れ給へる御さまにて、

「釈迦牟尼仏弟子」と名乗りて、ゆるるかによみ給へる、

また世に知らず聞こゆ。

現代語訳

白い綾の柔らかな下着に、紫苑色の指貫などお召しになって、

色が濃い御直衣に、帯もしどけなくおくつろぎになっている

ご様子であって、

「釈迦牟尼仏弟子」と名のって、

経文をゆっくりとお読みになっているのは、

また世間に例を知らず聞こえる。

品詞分解

白き ク活用形容詞「しろし」連体形
名詞
格助詞
なよよかなる、 ナリ活用形容動詞「なよよかなり」連体形
紫苑色 名詞
など 副助詞
奉り ラ行四段活用動詞「奉る」連用形
て、 接続助詞
こまやかなる ナリ活用形容動詞「こまやかなり」連体形
御直衣、 名詞
名詞
しどけなく ク活用形容詞「しどけなし」連用形
うち乱れ ラ行下二段活用動詞「うち乱る」連用形
給へ 尊敬の補助動詞「給ふ」ハ行四段活用動詞已然形
完了の助動詞「り」連体形
御さま 名詞
断定の助動詞「なり」連用形
て、 接続助詞
「釈迦牟尼仏弟子」 名詞
格助詞
名のり ラ行四段活用動詞「名のる」連用形
て、 接続助詞
ゆるるかに ナリ活用形容動詞「ゆるるかなり」連用形
よみ マ行四段活用動詞「よむ」連用形
給へ ハ行四段活用動詞「給ふ」已然形
る、 完了の助動詞「り」連体形
また、 副詞
名詞
格助詞
知ら ラ行四段活用動詞「知る」未然形
打消の助動詞「ず」連用形
聞こゆ。 ヤ行下二段活用動詞「聞こゆ」終止形

沖より舟どものうたひののしりて漕ぎ行くなども聞こゆ。

現代語訳

沖を通って何艘もの舟が大声で歌って子で行く声なども聞こえる。

品詞分解

名詞
より 格助詞
舟ども 名詞+接尾語
格助詞
うたひ ハ行四段活用動詞「うたふ」連用形
ののしり ラ行四段活用動詞「ののしる」連用形
接続助詞
漕ぎ行く カ行四段活用動詞「漕ぎ行く」連体形
など 副助詞
係助詞
聞こゆ。 ヤ行下二段活用動詞「聞こゆ」終止形