人々の語りきこえし海山のありさまを、
はるかに思しやりしを、御目に近くては、げに及ばぬいそのたたずまひ、
二なく書き集め給へり。
現代語訳
(以前)人々がお話し申し上げた海山の有様を、
(都から)はるかにご想像になったけれど、
目の前に御覧になって(今)は、
なるほど想像も及ばない磯のありさまを、
比類なくお書き集めになっている。
品詞分解
人々 | 名詞 |
の | 格助詞 |
語り | ラ行四段活用動詞「語る」連用形 |
きこえ | 謙譲の補助動詞ヤ行下二段活用動詞「きこゆ」連用形
筆者⇒源氏 |
し | 過去の助動詞「き」連体形
接続は連用形(カ変・サ変は特別) |
海山 | 名詞 |
の | 格助詞 |
ありさま | 名詞 |
を、 | 格助詞 |
はるかに | ナリ活用形容動詞「はるかなり」連用形 |
思しやり | ラ行四段活用動詞「思しやる」連用形
尊敬語 本動詞 「思ひやる」の尊敬語 筆者⇒源氏 |
し | 過去の助動詞「き」連体形
接続は連用形(カ変・サ変は特別) |
を、 | 接続助詞 |
御目 | 名詞 |
に | 格助詞 |
近く | ク活用形容詞「近し」連用形 |
て | 接続助詞 |
は、 | 係助詞 |
げに | 副詞 |
及ば | バ行四段活用動詞「及ぶ」未然形 |
ぬ | 打消の助動詞「ず」連体形
接続は未然形 |
磯 | 名詞 |
の | 格助詞 |
たたずまひ、 | 名詞 |
二なく | ク活用形容詞「二なし」連用形 |
書き | カ行四段活用動詞「書く」連用形 |
集め | マ行下二段活用動詞「集む」連用形 |
給へ | 尊敬の補助動詞「給ふ」已然形
ハ行四段活用 筆者⇒源氏 |
り。 | 完了の助動詞「り」終止形
接続はサ変の未然形・四段の已然形 |
「このごろ」の上手にすめる千枝、常則などを召して、
作り絵つかうまつらせばや」と、心もとながりあへり。
現代語訳
供人「このごろの名人と世間で言っているようである
千枝、常則などをお呼びになって、
墨書に彩色をしてさしあげさせたい」と、
互いにもどかしがっている。
品詞分解
「このごろ | 名詞 |
の | 格助詞 |
上手 | 名詞 |
に | 格助詞 |
す | サ行変格活用動詞「す」終止形 |
める | 推量の助動詞「めり」連体形
接続は終止形・ラ変型は連体形 |
千枝、 | 名詞 |
常則 | 名詞 |
など | 副助詞 |
を | 格助詞 |
召し | サ行四段活用動詞「召す」連用形 |
て、 | 接続助詞 |
作り絵 | 名詞 |
つかうまつら | ラ行四段活用動詞「つかうまつる」未然形 |
せ | 使役の助動詞「す」未然形
接続は四段・ナ変・ラ変の未然形 |
ばや」 | 終助詞 |
と、 | 格助詞 |
心もとながりあへ | ク活用形容詞「心許なし」語幹+接尾語 ラ行四段活用動詞「がる」連用形ハ行四段活用動詞「あふ」已然形 |
り。 | 完了の助動詞「り」終止形
接続はサ変の未然形・四段の已然形 |