源氏物語須磨の秋品詞分解現代語訳助動詞敬語

須磨3げにいかに思ふらむ、わが身ひとつにより、親はらから、

かた時たち離れ難く、ほどにつけつつ思ふらむ家を別れて、

かくまどひあへ思す に、いみじくて、いとかく思ひ沈むさまを

心細しと思うらむと思せば、昼は何くれと戯れ言うちのたまひ紛らはし、

つれづれなるままに、いろいろの紙を継ぎつつ、

手習をし給ひ、めづらしきさまなる唐の綾などに、

さまざまの絵どもを書きすさび給へ、屏風の面どもなど、

いとめでたく見どころあり。

現代語訳

なるほど(この人たちは)どう思っているのだろう、

私の身一つのために、親や兄弟姉妹や、片時も離れにくく、

それぞれの身分に応じて思っているであろう家を離れて、

このように互いに先の見込みも立たず

途方に暮れているよとお思いになると、

ひどく不憫で、ひどくこのように自分が思ひ 沈んでいる様子を

人々は心細いとおもっているだろうとお思いになるので、

昼は何やかやと冗談をちょっと仰って気持ちを紛らわし、

所在ないままにさまざまの色の紙を継いでは、

すさび書きをなさり、珍しい地の唐の綾などに、

さまざまの何枚もの絵を慰みにお書きになっているのや、

屏風の表の何枚もの絵などは、とてもすばらしく見どころがある。

品詞分解

げに 副詞
いかに 副詞ナリ活用形容動詞「いかなり」連用形の副詞化
思ふ ハ行四段活用動詞「思ふ」終止形
らむ、 現在推量の助動詞「らむ」終止形

接続は終止形(ラ変型は連体形)
◯/◯/らむ/らむ/らめ/◯

代名詞
格助詞
名詞
ひとつ 名詞
格助詞
より、 ラ行四段活用動詞「よる」連用形
名詞
はらから、 名詞
かた時 名詞
たち離れがたく、 ラ行下二段活用動詞「たちはなる」連用形+ク活用形容詞「かたし」連用形
ほど 名詞
格助詞
つけ カ行下二段活用動詞「つく」連用形
つつ 接続助詞
思ふ ハ行四段活用動詞「思ふ 」終止形
らむ 現在推量の助動詞「らむ」連体形

接続は終止形(ラ変型は連体形)
◯/◯/らむ/らむ/らめ/◯

名詞
格助詞
別れ ラ行下二段活用動詞「別る」連用形
て、 接続助詞
かく 副詞
まどひあへ ハ行四段活用動詞「まどひあふ」已然形
完了の助動詞「り」連体形

接続はサ変の未然形・四段の已然形
ら/り/り/る/れ/れ

格助詞
思す サ行四段活用動詞「思す 」連体形

尊敬語本動詞

筆者⇒源氏

に、 格助詞
いみじく シク活用形容詞「いみじ」連用形
て、 接続助詞
いと 副詞
かく 副詞
思ひ沈む マ行四段活用動詞「思ひ沈む 」連体形
さま 名詞
格助詞
心細し ク活用形容詞「こころ細し」終止形
格助詞
思ふ ハ行四段活用動詞「思ふ 」終止形
らむ 推量の助動詞「らむ」終止形

接続は終止形(ラ変型は連体形)
◯/◯/らむ/らむ/らめ/◯

格助詞
思せ 尊敬語 本動詞

サ行四段活用動詞「思す 」已然形

筆者⇒源氏

ば、 接続助詞
名詞
係助詞
何くれと 副詞
戯れ言 名詞
うちのたまひ 接頭語「うち」+ハ行四段活用動詞「のたまふ」連用形

尊敬語 本動詞

筆者⇒源氏

紛らはし、 「サ行四段活用動詞「紛らはす」連用形
つれづれなる ナリ活用形容動詞「づれづれなり」連体形
まま 名詞
に、 格助詞
いろいろ 名詞
格助詞
名詞
格助詞
継ぎ ガ行四段活用動詞「継ぐ」連用形
つつ、 接続助詞
手習 名詞
格助詞
サ行変格活用動詞「す」連用形
給ひ、 尊敬の補助動詞「給ふ」連用形

ハ行四段活用動詞

筆者⇒源氏

めづらしき シク活用形容詞「めづらし」連体形
さま 名詞
なる 断定の助動詞「なり」連体形

接続は体言連体形など
なら/なり・に/なり/なる/なれ/なれ

名詞
格助詞
名詞
など 副助詞
に、 格助詞
さまざま 名詞
格助詞
絵ども 名詞+接尾語
格助詞
書き カ行四段活用動詞「かく」連用形
すさび バ行四段活用動詞「すさぶ」連用形
給へ 尊敬語補助動詞「給ふ」

ハ行四段活用動詞「給ふ」已然形

筆者⇒源氏

る、 完了の助動詞「り」連体形

接続はサ変の未然形・四段の已然形
ら/り/り/る/れ/れ

屏風 名詞
格助詞
面ども 名詞+接尾語
など、 副助詞
いと 副詞
めでたく ク活用形容詞「めでたし」連用形
みどころ 名詞
あり。 ラ行変格活用動詞「あり」終止形