源氏物語須磨の秋品詞分解現代語訳助動詞敬語

須磨7ほのかに、ただちひさき鳥の浮かべると見やらるるも、

心細げなるに、雁の、連ねて泣く声楫の音にまがへを、

うちながめ給へ御手つき、黒き御数珠に映え給へ

故郷の女戀しき人々、心みな慰みに/けり

現代語訳

舟の影がほのかに、ただ小さい鳥が浮かんでいる

と自然に眺められるのも、心細そうな感じであるのに、

雁の、列をなしてなく声が楫の音に似ている雁を、

何心なく物思いに沈んでじっと御覧になって、

涙がこぼれるのをお払いになっている手のご様子が、

黒い数珠にうつりあって美しくお見えになっているのには、

故郷の女が恋しい人々は、心がすっかり晴れてしまったよ。

品詞分解

ほのかに、 ナリ活用形容動詞「ほのかなり」連用形
ただ 副詞
ちひさき ク活用形容詞「ちひさし」連体形
名詞
格助詞
浮かべ バ行四段活用動詞「浮かぶ」已然形
完了の助動詞「り」連体形

接続はサ変の未然形・四段の已然形
ら/り/り/る/れ/れ

格助詞
見やら ラ行四段活用動詞「見やる」未然形
るる 自発の助動詞「る」連体形

接続は四段・ナ変・ラ変の未然形
れ/れ/る/るる/るれ/れよ

も、 係助詞
 心細げなる ナリ活用形容動詞「心細げなり」連体形
に、 接続助詞
名詞
の、 格助詞
連ね ナ行下二段活用「連ぬ」連用形
接続助詞
鳴く カ行四段活用動詞「鳴く」連体形
名詞
名詞
格助詞
名詞
格助詞
まがへ ハ行四段活用動詞「まがふ」已然形
完了の助動詞「り」連体形

接続はサ変の未然形・四段の已然形
ら/り/り/る/れ/れ

を、 格助詞
うちながめ マ行下二段活用動詞「うちながむ」連用形
給ひ ハ行四段活用動詞「給ふ」連用形

尊敬語補助動詞

筆者⇒源氏

て、 接続助詞
名詞
格助詞
こぼるる ラ行下二段活用動詞「こぼる」連体形
格助詞
かき払ひ ハ行四段活用動詞「かき払ふ」連用形
給へ ハ行四段活用動詞「給ふ」已然形
完了の助動詞「り」連体形

接続はサ変の未然形・四段の已然形
ら/り/り/る/れ/れ

御手つき、 名詞
黒き ク活用形容詞「くろし」連体形
御数珠 名詞
格助詞
映え ヤ行下二段活用動詞「映ゆ」連用形
給へ ハ行四段活用動詞「給ふ」已然形

尊敬語補助動詞

筆者⇒源氏

る、 完了の助動詞「り」連体形

接続はサ変の未然形・四段の已然形
ら/り/り/る/れ/れ

故郷 名詞
格助詞
名詞
恋しき ク活用形容詞「恋し」連体形
人々、 名詞
名詞
みな 副詞
慰み マ行四段活用動詞「慰む」連用形
完了の助動詞「ぬ」連用形

接続は連用形
な/に/ぬ/ぬる/ぬれ/ね

けり。 詠嘆の助動詞「けり」終止形

接続は連用形
けら/◯/けり/ける/けれ/◯