須磨8はつかりは恋しき人のつらなれや

旅のそら飛ぶ声の悲しき

現代語訳

源氏

初雁は都にいる恋しい人の仲間なのかしら、

旅の空を飛ぶ声の切ないほど悲しいことよ。

品詞分解

初雁 名詞
係助詞
恋しき シク活用形容詞「恋し」連体形
名詞
格助詞
つら 名詞
なれ 断定の助動詞「なり」已然形
係助詞(係り結び)
名詞
格助詞
名詞
飛ぶ バ行四段活用動詞「飛ぶ」連体形
名詞
格助詞
悲しき シク活用形容詞「かなし」連体形(「や」の結び)

とのたまへば、義清。

かきつらね昔のことぞ思ほゆる雁はその世のともならねども

現代語訳

と仰ると、義清は、

次々と続けて昔のことが自然に思い出される。

雁はその昔の世の友ではないけれども。

品詞分解

格助詞
のたまへ ハ行四段活用動詞「のたまふ」已然形
ば、 接続助詞
義清、 名詞
かきつらね ナ行下二段活用動詞「かきつらぬ」連用形
名詞
格助詞
こと 名詞
係助詞(係り結び)
思ほゆる ヤ行下二段活用動詞「思ほゆ」連体形(「ぞ」の結び)
名詞
係助詞
代名詞
格助詞
名詞
格助詞
とも 名詞
なら 断定の助動詞「なり」未然形
打消 の助動詞「ず」已然形
ども 接続助詞

民部大輔

心から常世をすててなく雁を

雲のよそにも思ひ けるかな

現代語訳

民部大輔は、

自分の心から故郷の常世の国を捨てて鳴く雁を、

今までは雲の外の関係のないことと思っていたことよ。

品詞分解

民部大輔 名詞
名詞
から 格助詞
常世 名詞
格助詞
すて タ行下二段活用動詞「すつ」連用形
接続助詞
なく カ行四段活用動詞「鳴く」連体形
名詞
格助詞
名詞
格助詞
よそ 名詞
格助詞
係助詞
思ひ ハ行四段活用動詞「思ふ」連用形
ける 詠嘆の助動詞「けり」連体形
かな 終助詞

 

前右近将監、

「とこ世いでて旅の空なるかりがねも

つらにおくれぬほどぞなぐさむ

友まどはしてば、いかにはべらまし」といふ。

 

 

現代語訳

「常世の国を出て旅の空にいる雁も、

仲間に遅れないで一緒にいる間は慰むことだ。

友を見失ってしまったら、どんなに悲しいことでございましょう」

という。

品詞分解

前右近将監 名詞
「常世 名詞
出で ダ行下二段活用動詞「出づ」連用形
接続助詞
名詞
格助詞
名詞
なる 断定の助動詞「なり」連体形
かりがね 名詞
係助詞
つら 名詞
格助詞
おくれ ラ行下二段活用動詞「おくる」未然形
打消しの助動詞「ず」連体形
ほど 名詞
係助詞(係り結び)
なぐさむ マ行四段活用動詞「なぐさむ」連体形「ぞ」の結び

 

名詞
まどはし サ行四段活用動詞「まどはす」連用形
完了の助動詞「つ」未然形
ば、 接続助詞
いかに ナリ活用形容動詞「いかなり」連用形
はべら ラ行変格活用動詞「はべり」未然形
まし」 反実仮想の助動詞「まし」終止形
格助詞
いふ。 ハ行四段活用動詞「いふ」終止形