木曾三百余騎、六千余騎が中をたてさま、よこさま、蜘手、十文字にかけわつて、うしろへつつと出でたれば、五十騎ばかりになりにけり。
そこを破つて行くほどに、土肥次郎実平二千余騎でささへたり。
其をもやぶつてゆくほどに、あそこでは四五百騎、ここでは二三百騎、百四五十騎、百騎ばかりが中をかけわりかけわりゆくほどに、主従五騎にぞなりにける。
五騎が内まで巴はうたれざれけり。
木曽殿
「おのれは、とうとう、女なれば、いづちへもゆけ。我は打死せんと思ふなり。もし人手にかからば自害をせんずれば、木曾殿の最後のいくさに、女を具せられたりけりなんど、いはれん事もしかるべからず」
と宣ひけれども、
ポイント
- そこを破つて、の「そこ」と其をもやぶつての「其」は何を指す?
- 促音便に注意!水色のマーカーです。
- とうとうはウ音便、水色のマーカーです。
- 「せんずれ」しっかり品詞分解できますか?下で確認してくださいね!
現代語訳
木曽の三百余騎は、(一条次郎の)6000余騎の中を縦横無尽に駆け破って、後ろにつっと出ると、五十騎ほどになってしまった。
(木曽の五十騎は、)そこ(一条次郎の軍)を破っていくうちに、(今度は)土肥次郎実平が二千余騎で守っている。
それ(土肥次郎実平の軍)も破っていくうちに、あそこで、四、五百騎、ここでニ、三百騎、百四、五十騎、百騎ほどの中を駆け破って、駆け破っていくうちに、主従五騎になってしまった。
五騎のうちまでは、巴は討たれなかった。
木曽殿
「お前は、女なのだから、早く早くどこへでもへもゆけ。私は打死しようと思ふのだ。もし人手にかかったら自害するつもりなので、(他人に)『木曾殿が最後のいくさで、女をお連れになっていた』などと、いはれる事もよろしくない
とおっしゃったが、
品詞分解
木曾三百余騎 | 名詞 | ||||||
六千余騎 | 名詞 | ||||||
が | 格助詞 | ||||||
中 | 名詞 | ||||||
を | 格助詞 | ||||||
たてさま | 名詞 | ||||||
よこさま | 名詞 | ||||||
蜘蛛手 | 名詞 | ||||||
十文字 | 名詞 | ||||||
に | 格助詞 | ||||||
かけわつ | ラ行四段活用動詞「かけわる」連用形「かけわり」促音便 | ||||||
て | 接続助詞 | ||||||
うしろ | 名詞 | ||||||
へ | 格助詞 | ||||||
つつと | 副詞 | ||||||
出で | ダ行下二段活用動詞「出で」連用形 | ||||||
たれ | 完了の助動詞「たり」已然形 | ||||||
ば | 接続助詞 | ||||||
五十騎 | 名詞 | ||||||
ばかり | 副助詞 | ||||||
に | 格助詞 | ||||||
なり | ラ行四段活用動詞「なる」連用形 | ||||||
に | 完了の助動詞「ぬ」連用形 | ||||||
けり。 | 過去の助動詞「けり」終止形 | ||||||
そこ | 代名詞 一条次郎の軍勢をさす | ||||||
を | 格助詞 | ||||||
破つ | ラ行四段活用動詞「破る」連用形「破り」促音便 | ||||||
て | 接続助詞 | ||||||
行く | カ行四段活用動詞「行く」連体形 | ||||||
ほど | 名詞 | ||||||
に | 格助詞 | ||||||
土肥次郎実平 | 名詞 | ||||||
二千余騎 | 名詞 | ||||||
で | 格助詞 | ||||||
ささへ | ハ行下二段活用動詞「ささふ」連用形 | ||||||
たり。 | 完了の助動詞「たり」終止形 | ||||||
それ | 代名詞 土肥次郎実平をさす | ||||||
を | 格助詞 | ||||||
も | 係助詞 | ||||||
やぶつ | ラ行四段活用動詞「破る」連用形「破り」促音便形 | ||||||
て | 接続助詞 | ||||||
ゆく | カ行四段活用動詞「ゆく」連体形 | ||||||
ほど | 名詞 | ||||||
に | 格助詞 | ||||||
あそこ | 代名詞 | ||||||
で | 格助詞 | ||||||
は | 係助詞 | ||||||
四五百騎 | 名詞 | ||||||
ここ | 代名詞 | ||||||
で | 格助詞 | ||||||
は | 係助詞 | ||||||
二三百騎 | 名詞 | ||||||
百四 | 名詞 | ||||||
五十騎 | 名詞 | ||||||
百騎 | 名詞 | ||||||
ばかり | 副助詞 | ||||||
が | 格助詞 | ||||||
中 | 名詞 | ||||||
を | 格助詞 | ||||||
かけわり | ラ行四段活用動詞「かけわる」連用形 | ||||||
かけわり | ラ行四段活用動詞「かけわる」連用形 | ||||||
ゆく | カ行四段活用動詞「行く」連体形 | ||||||
ほど | 名詞 | ||||||
に | 格助詞 | ||||||
主従五騎 | 名詞 | ||||||
に | 格助詞 | ||||||
ぞ | 係助詞(係り結び) | ||||||
なり | ラ行四段活用動詞「なる」連用形 | ||||||
に | 完了の助動詞「ぬ」連用形 | ||||||
ける。 | 過去の助動詞「けり」連体形(「ぞ」結び) | ||||||
五騎 | 名詞 | ||||||
が | 格助詞 | ||||||
内 | 名詞 | ||||||
まで | 副助詞 | ||||||
巴 | 名詞 | ||||||
は | 係助詞 | ||||||
うた | タ行四段活用動詞「討つ」未然形 | ||||||
れ | 受け身の助動詞「る」未然形 | ||||||
ざり | 打消の助動詞「ず」連用形 | ||||||
けり。 | 過去の助動詞「けり」終止形 | ||||||
木曾殿 | 名詞 | ||||||
「おのれ | 代名詞 | ||||||
は | 係助詞 | ||||||
疾う疾う | 副詞
ク活用形容詞「疾し」連用形「疾く」の 「疾く疾く」のウ音便 |
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女 | 名詞 | ||||||
なれ | 断定の助動詞「なり」已然形 | ||||||
ば | 接続助詞 | ||||||
いづち | 代名詞 | ||||||
へ | 格助詞 | ||||||
も | 係助詞 | ||||||
ゆけ。 | カ行四段活用動詞「ゆく」命令形 | ||||||
我 | 代名詞 | ||||||
は | 係助詞 | ||||||
討死せ | サ行変格活用動詞「討死す」未然形 | ||||||
ん | 意志の助動詞「む」終止形 | ||||||
と | 格助詞 | ||||||
思ふ | ハ行四段活用動詞「思ふ」連体形 | ||||||
なり。 | 断定の助動詞「なり」終止形 | ||||||
もし | 副詞 | ||||||
人手 | 名詞 | ||||||
に | 格助詞 | ||||||
かから | ラ行四段活用動詞「かかる」未然形 | ||||||
ば | 接続助詞 | ||||||
自害 | 名詞 | ||||||
を | 格助詞 | ||||||
せ | サ行四段活用動詞「す」未然形 | ||||||
んずれ | 意志の助動詞「むず」已然形 | ||||||
ば | 接続助詞 | ||||||
木曾殿 | 名詞 | ||||||
の | 格助詞 | ||||||
最後 | 名詞 | ||||||
の | 格助詞 | ||||||
いくさ | 名詞 | ||||||
に | 格助詞 | ||||||
女 | 名詞 | ||||||
を | 格助詞 | ||||||
具せ | サ行変格活用動詞「具す」未然形 | ||||||
られ | 尊敬の助動詞「らる」連用形 | ||||||
たり | 完了の助動詞「たり」連用形 | ||||||
けり | 過去の助動詞「けり」終止形 | ||||||
なんど | 副助詞 | ||||||
いは | ハ行四段活用動詞「言ふ」未然形 | ||||||
れ | 受け身の助動詞「る」の未然形 | ||||||
ん | 推量の助動詞「む」連体形 | ||||||
事 | 名詞 | ||||||
も | 係助詞 | ||||||
しかるべから | ク活用形容詞「しかるべし」未然形 | ||||||
ず」 | 打消の助動詞「ず」終止形 | ||||||
と | 格助詞 | ||||||
宣ひ | ハ行四段活用動詞「のたまふ」連体形 | ||||||
けれ | 過去の助動詞「けり」已然形 | ||||||
ども | 接続助詞 |
学習塾で八年ぶりに、教鞭をとったのですが、とても分かりやすく、感動しました。47歳になるのですが、私の大学受験の時もこんなのがあれば、随分助かったのに、、と思います。
話が感動極まる作品内容な上に、品詞分解が とても素晴らしく、気持ちがひときわ入り込んでしまい、、頸を切られる所は、感極まり鼻水を垂らして大泣きしてしまい、問題集を涙だらけにしてしまいました。
有難うございました。
そう言っていただけて光栄です!お読みいただきありがとうございます!