原文
今井四郎只一騎、五十騎ばかりが中へ駆け入り、鐙踏ん張り立ち上がり、大音声あげて名乗りけるは
今井四郎兼平
「日頃は音にも聞きつらん、今は目にも見給へ。
木曽殿の御乳母子、今井四郎兼平、生年三十三にまかりなる。
さる者ありとは鎌倉殿までも知ろし召されたるらんぞ。
兼平討つて見参に入れよ」
とて、射残したる八筋の矢を、差し詰め引き詰め散々に射る。
現代語訳
今井四郎兼平は、たった一騎で、(新手の武士の)五十騎ほどの中へ駆け入り、
鐙を踏ん張って立ち上がり、大声を上げて名乗ったことには、
今井四郎兼平
「日頃は噂にも聞いていただろう。
今は(噂ではなく自分の)目でご覧あれ。
木曽殿の御乳母子の、今井四郎兼平、生年三十三になる。
さる(今井四郎という)者ありとは鎌倉殿(源頼朝)までもご存知であろうぞ。
兼平を討つて(鎌倉殿に)ご覧に入れよ」
といって、残していた八筋の矢を、弓につがえては引き、差しつがえては引き、散々に射った。
ポイント
促音便 水色のマーカーです
尊敬語 緑のマーカーです。
品詞分解
今井四郎 | 名詞 |
只 | 副詞 |
一騎 | 名詞 |
五十騎 | 名詞 |
ばかり | 副助詞 |
が | 格助詞 |
中 | 名詞 |
へ | 格助詞 |
駆け入り | ラ行四段活用動詞「駆けいる」連用形 |
鐙 | 名詞 |
踏ん張り | ラ行四段活用動詞「踏ん張る」連用形 |
立ち上がり | ラ行四段活用動詞「立ち上がる」連用形 |
大音声 | 名詞 |
あげ | ガ行下二段活用動詞「あぐ」連用形 |
て | 接続助詞 |
名乗り | ラ行四段活用動詞「名乗る」連用形 |
ける | 過去の助動詞「けり」連体形 |
は | 係助詞 |
「日頃 | 名詞 |
は | 係助詞 |
音 | 名詞 |
に | 格助詞 |
も | 係助詞 |
聞き | カ行四段活用動詞「聞く」連用形 |
つ | 完了の助動詞「つ」終止形 |
らん | 推量の助動詞「らむ」終止形 |
今 | 名詞 |
は | 係助詞 |
目 | 名詞 |
に | 格助詞 |
も | 係助詞 |
見 | マ行上一段活用動詞「見る」連用形 |
給へ。 | ハ行四段活用動詞「たまふ」命令形
尊敬語補助動詞 今井四郎兼平→周りの人 なさる。 |
木曽殿 | 名詞 |
の | 格助詞 |
御乳母子 | 接頭語+名詞 |
今井四郎兼平 | 名詞 |
生年 | 名詞 |
三十三 | 名詞 |
に | 格助詞 |
まかりなる。 | ラ行四段活用動詞「まかりなる」終止形
謙譲語本動詞今井四郎兼平→周りの人 なり申し上げる |
さる | 連体詞
※副詞「さ」+ラ行変格活用動詞「あり」の連体形「ある」から |
者 | 名詞 |
あり | ラ行変格活用動詞「あり」終止形 |
と | 格助詞 |
は | 係助詞 |
鎌倉殿 | 名詞 |
まで | 副助詞 |
も | 係助詞 |
知ろし召さ | サ行四段活用動詞「しろしめす」未然形
尊敬語本動詞 今井四郎兼平→鎌倉殿 お知りになる ご存知になる |
れ | 尊敬の助動詞「る」連用形
今井四郎兼平→鎌倉殿 なさる |
たる | 完了の助動詞「たり」連体形 |
らん | 推量の助動詞「らむ」連体形 |
ぞ。 | 係助詞 |
兼平 | 名詞 |
討つ | タ行四段活用動詞「討つ」連用形「討ち」促音便 |
て | 接続助詞 |
見参 | 名詞 |
に | 格助詞 |
入れよ」 | ラ行下二段活用動詞「入る」命令形 |
とて | 格助詞 |
射残し | サ行四段活用動詞「射残す」連用形 |
たる | 完了の助動詞「たり」連体形 |
八筋 | 名詞 |
の | 格助詞 |
矢 | 名詞 |
を | 格助詞 |
差し詰め | マ行下二段活用動詞「差し詰む」連用形 |
引き詰め | マ行下二段活用動詞「引き詰む」連用形 |
散々に | ナリ活用形容動詞「散々なり」連用形 |
射る。 | ラ行上一段活用動詞「射る」終止形 |
学習塾で八年ぶりに、教鞭をとったのですが、とても分かりやすく、感動しました。47歳になるのですが、私の大学受験の時もこんなのがあれば、随分助かったのに、、と思います。
話が感動極まる作品内容な上に、品詞分解が とても素晴らしく、気持ちがひときわ入り込んでしまい、、頸を切られる所は、感極まり鼻水を垂らして大泣きしてしまい、問題集を涙だらけにしてしまいました。
有難うございました。
そう言っていただけて光栄です!お読みいただきありがとうございます!