本文
もの思ふことの(が)慰むにはあらねども、寝ぬ夜の友とならひにける月の光(を)待ち出でぬれば、例の妻戸おしあけて、ただひとりa見出したる、荒れたる庭の秋の露、bかこちがほなる虫の音も、物ごとに心を傷まcしむるつま(端緒)となりければ、心に乱れおつる涙をおさへて、とばかり来し方行くさきを思ひdつづくるに、(「)さもあさましくeはかなかりける契りの程をなどかくしも思ひいれけん(。」)と、わが心のみぞかへすがへす恨めしかりける。
東洋大学ではこう聞かれた
a見出す bかこちがほなり cしむ dつづく eはかなし の活用語を入れよ
⇒空欄の後ろの接続(上に何形が来るか)を確認しよう
aの後は、「たる」⇒完了存続の「たり」は連用形接続⇒サ行4段活用の動詞「見出す」の連用形「見出し」
bの後は、「虫の音」⇒名詞=体言が来ているから⇒ナリ活用の形容動詞「かこちがほなり」の連体形「かこちがほなる」
cの後は、「つま」⇒名詞=体言が来ているから⇒使役の助動詞「しむ」の連体形「しむる」
dの後は、「に」⇒ 単純接続の接続助詞「に」は連体形接続⇒カ行下二段活用動詞「つづく」の連体形「つづくる」
eの後は、「ける」⇒過去の助動詞「ける」は連用形接続⇒ク活用形容詞「はかなし」の連用形「はかなかり」、助動詞がつづいているので補助活用に注意しよう
結局何ができればいいの?
- 空欄の後ろの接続(上に何形が来るか)を言えるようにする
ここでは 「たり」が連用形接続、「に」が連体形接続、「けり」が連用形接続
- 動詞・形容動詞・助動詞・形容詞を活用させることができるようにする
ここでは「サ行四段活用動詞見出す」「ナリ活用形容動詞かこちがほなり」「助動詞しむ」「カ行下二段活用動詞つづく」
本文
夢うつつとも分きがたかりし宵の間より、A関守のうちぬる程をだにいたくもたどらずなりにしや。うちしきる夢のかよひ路は、一夜ばかりのとだえもあるまじきやうにならひにけるを、さるはB月草のあだなる色を、かねてしらぬにしもあらざりしかど、いかに移りいかに染ける心にか、さもうちつけにあやにくなりし心迷ひには、C「ふし柴の」とだに思ひしらざりける。
東洋大学ではこう聞かれた
A関守のうちぬる程をだにいたくもたどらずなりにしや の内容は?
B月草のあだなる色 を説明すると?
C「ふし柴の」とだに思ひしらざりける。を待賢門院加賀の和歌「かねてより思ひしことぞ伏し柴のこるばかりなる嘆きせむとは」を踏まえると、どんな展開が推測されそう?
結局何ができればいいの?
- Aたどる=確かめながら探る
- B月草=ツユクサ ツユクサで染めた色があせやすいことから人の心が移りやすいことの比喩になっている
- 「あだなり=浮気だ」
- C「嘆きせむとは」に注目、男・女誰が思っているか、主語おさえる
本文
やうやう色づきぬ。秋の風の(が)憂き身に知ら/るアる/心ぞ、うたてく悲しきものなりけるを、Dおのづから頼むる宵はありしにもあらず、打ち過ぐる鐘の響きをつくづくと聞き臥したるも、生け/イる/心地だにせねば、げに今さらに「鳥はものかは」とぞ思ひしられける。
東洋大学ではこう聞かれた
アの「る」の文法的説明は?
イの「る」の文法的説明は?
Dおのづから/頼むる/宵は/ありしにもあらずの解釈は?
結局何ができればいいの?
- 「る」の識別ができればいい。
- 「頼むる=下二段活用 あてにさせる 期待させる」「おのづから」の単語を覚えているかどうか
本文
さすがに絶えぬ夢の心地は、ありしに変はるけぢめも見えぬものから、とにかくに障りがちなる葦分にて、神無月にもなりぬ。
E降りみ降らずみ定めなき頃の空のけしきは、いとど袖の(乾く)いとまなき心地して、起き臥しながめわぶれど、(あの人の訪れが)絶えて程ふるおぼつかなさの、慣らはぬ日数の/へだつウる/も、(「)今はかくにこそ。(」)と思ひなりぬる世の心細さぞ、何に譬へてもあかず悲しかりける。
東洋大学ではこう聞かれた
E降りみ降らずみの解釈は?
結局何ができればいいの?
- 「降りみ降らずみ」は連語としてそのまま覚える、文脈で判断できたら尚良
本文
いとせめて/あくがるエる/心もよほすにや、Fにはかに太秦に詣でてんと思ひ立ぬるも、かつうはいとあやしく、仏の御心のうち恥づかしけれど、二葉より参りなれにしかば、すぐれて頼もしき心地して、G心づからの悩ましさも愁へきこえむとにやあらん、しばしは(仏の)御前に。(祈念した)
東洋大学ではこう聞かれた
エの「る」の文法的説明は?
Fにはかに/太秦に詣でてんと思ひ立ぬるもの解釈は?
G心づからの悩ましさも/愁へ/きこえむとにやあらんの解釈は?
結局何ができればいいの?
- 「にはかに=急に 突然に」「て/ん=強意の助動詞「つ」未然形+意志の助動詞「む(ん)」の終止形=きっと~するだろう」
- 「愁へ」の対応 「きこえ」謙譲の補助動詞 「申し上げる」「心づから」自分の心から起こった 自発的に
本文
供なる人々、(が)「時雨しぬべし。はや帰り給へ」などいへば、心にもあらず急ぎ出づるに、法金剛院の紅葉(が)この頃ぞ盛りと見えていとおもしろければ、過ぎがてにおりぬ。高欄のつまなる岩の上におりゐて、山の方を見やれば、木々の紅葉(が)色々に見えて、松にかかれる枝、(が)心の色もほかには異なる心地して、いと見所/おほかオる/に、H憂き故里はいとど忘られぬるにや、とみにも立たれず。をりしも風さへ吹て、物騒がしくなりければ、見さすやうにて立つほど、
X人しれず契りしなかのことの葉を嵐吹けとは思はざりしを
と思ひつづくるにも、すべて思ひまずることなき心のうちならんかし。
東洋大学ではこう聞かれた
オの「る」の文法的説明は?
H憂き故里はいとど忘られぬるにやの解釈は?
X人しれず契りしなかのことの葉を嵐吹けとは思はざりしをの内容は?
結局何ができればいいの?
- 「憂き 憂し」つらい 「いとど」いよいよ いっそう
- 直前の「をりしも風さへ吹て、物騒がしくなりければ」に注目
- 人しれず契りしなかのことの葉を嵐吹けとは思はざりしをの訳「人知れず契った(あの人との)間の言葉を嵐が吹き飛ばしてくれとは思わなかったのに」
「る」の識別
- 自発、受け身、可能、尊敬の助動詞「る」の終止形 未然形接続
- 完了、存続の助動詞「り」の連体形 さみしい サ変の未然形 四段の已然形
- 動詞の一部
- 形容詞の一部